著者が紹介することばは時にユーモラス、時には鋭い矢を放ってくる。難しいことが簡単に、簡単なことがとても深いことも読むにつれ分かってくる。そして読後ことばがしっかり生きてきさえすれば、この世はまだまだ捨てたものじゃないと思えてくる。
個人的には「ラジオは伝統芸能のようなもの」というくだりが好きだ。話す人と聴く人がお互いの想像力をたくましくして、活字では伝えられぬ感情までも伝えてしまう。ラジオが人のことばを鍛える。
戦争、TV、医療、などなど、話題はいろいろです。一貫している主張は、「言葉をもっと大切にしようよ、その内容と、それから表現の仕方も」というのと、「伝統を守っていこうよ、それがただの保守主義ではなくて、わたしたちの生活に役立つのなら」という二つの点に、あると思います。これらの思想は、たぶん永久不変に正しいと思う。