『Maus』と同様、『Persepolis』の強みは、政治の物語がそのまま個人の物語として通用するところにある。ひとりの子どもの目を通して語られる物語は(サトラピのシンプルながらも表現力豊かなモノトーンの挿絵に反映されているように)、幼いマージェインがどのようにして家族の歴史を学び、それがどのようにしてイランの歴史とからみ合っていくのかを示すと同時に、自由主義を信奉していたサトラピの両親が、権力を得るにつれ厳格さをましていく原理主義体制に対抗していく様を見守る様子がうかがえる。率直で聡明なマージェインは、特に独立心がめばえる十代へと成長するにつれ、イスラム法の解釈が徐々に保守化していくイランに対するいらだちの色を隠さない。ただその一方で、マージェインが好感の持てる女性であることには、変わりはない。
『Persepolis』は、読者に、国内的文化的革命と血なまぐさい戦争に苦闘する国の、かなり個人的な状況における日常生活の一端を示す本だ。いかにも人間くさい歴史が、美しく、同情的に物語られている。(Robert Burrow, Amazon.co.uk)