幻想のアメリカ (カイエ・デュ・シネマ・ジャポン・映画の21世紀)
価格: ¥2,100
映画は肩の凝らない娯楽ともなり、知的な分析の対象ともなる。フランスの映画批評誌「カイエ・デュ・シネマ」の協力を得て発行されている同誌日本版は、映画を主に分析的な興味で見る人のための雑誌といえるだろう。デヴィッド・リンチ、ティム・バートン、デヴィッド・クローネンバーグという3人の映画監督を取り上げた本誌は、フランス版から転載された彼らへのインタビューを中心に構成したアメリカ映画特集号だ。
リンチへのインタビューはアメリカ中西部を舞台にした『ストレイト・ストーリー』について。聞き手はアメリカーナ(根源的・神話的なアメリカの表象の仕方の一種で、それは生き方や建築、絵画などにも関わる-本誌注)という概念を持ち出し、この映画には画家のエドワード・ホッパーとノーマン・ロックウェルの影響が感じ取れると指摘する。リンチはホッパーのことを大好きだと認め、ロックウェルの「アメリカーナ」にもホッパーに通じるものがあるとコメントするものの、自分の映画との関係については「映画を撮るときにはそういったことは考えないがね。考えるのは、しつこいようだが、物語のことだ」と一蹴している。バートンは『スリーピー・ホロウ』について、クローネンバーグは『イグジステンズ』についてのインタビュー。樋口泰人、梅本洋一、海老根剛、荻野洋一による評論も掲載されている。特集以外には、テレンス・スタンプ、黒沢清、ダニエル・ユイレ&ジャン=マリー・ストローブ、ペドロ・アルモドバルへのインタビューなど。(松本泰樹)