実験的な音はほとんどなく、スザンヌがそのまま歌っている感じだ。
メロディーは信じられないほどキャッチーで親しみやすい。
アコースティックの音も健在。爪弾くギターで始まる1曲目の
"Penitent"でいきなりスザンヌの世界に引き込まれてしまう。
シリアスな歌詞と、スザンヌの淡々とした歌声が静かに調和する。
3曲目の"Your Maggie May"はスザンヌのキャリアのなかでもひときわ
輝く曲のひとつではないだろうか。テンポのよい曲だが、その
透明感は"Calypso"に通じるものがある。7、9の2曲では
違った雰囲気のスザンヌが楽しめる。ボーナストラックの
"Golden"は本当にボーナスと呼ぶに相応しい佳曲。くぎ付けになったまま
50分のアルバムを聴き通してしまった。
どの曲もかなり緊密な人間模様をテーマにしているが、
なんともいえない広がりを感じさせるから不思議だ。
ニューヨークの吟遊詩人といわれるスザンヌ。
彼女のファンだけでなく、初めて聴く人にもお薦めの一枚である。