ローマ時代を反映した英知。
★★★★☆
ローマ帝政初期の混乱期、すなわちカリグラやネロが近親者を毒殺するのが当たり前の時代に生き、教え子ネロに殺害を命じられたストア派の貴族の思想が詰まっている。
本書では、3編の文章が収録されている。
「人生の短さについて」では、「生きることを学ぶことほどむずかしいことはない」、「生涯をかけて学ぶべきことは死ぬことである」と人生の目標を語っている。
「幸福な人生ついて」では、人生の仕合わせについてを語る。徳を求め、心が健全であること、忍耐強いことなどストア派的な内容を語る。
しかし、本人が元老院でそれなりの経歴を積んだこともあり、「幸福な人生について」では快楽や富を求めることを戒めながら、自分が資産家であることへの非難に対して激しく反論し、現実主機者であることも垣間見せる。
さらには、多数決による判断に従うことが正しいことではないと言い切る。ギリシャ時代から現在まで続く多数決による意思決定の不完全さを非難するところは、元老院で何かあったのかどうか不明ながら、民主主義(というか民主政体であろう)の過り易さを改めて思い起こさずにいられない。
人間は進歩するのか。退廃したローマ貴族という言い方もあるが、当時の貴族以上の暮らしをする我々は、彼以上の英知を備えているのか。熟考すべきであろう。
生は有限であるというこの事実
★★★★★
日本と日本人が未だ弥生時代であった紀元前に生を受けた人間が、
人が生きることに対してこれほどの洞察を与え、
的を射た箴言の数々を残していることに、先ず以て、驚きを禁じ得ない。
中身はこんにちでは至極当然な事柄と言えなくもない記述ばかりだ。
だが、二千年以上前の生を生きた人間がこういう風に考えていたのだ、と思うと、
なにか襟を正される思いがする。
二千年前にもそうしてこんにちでも、生は有限なのだ。
そんな当たり前の事実のもつ意味を、改めてしみじみ考えさせられる。
それが、本書が世界的・歴史的名著と呼ばれる所以であろう。
政治家の先輩の言葉
★★★★★
自然体に有意義に生きるための指南の言葉。
友人知人へ送った手紙の内容で、はるか昔に書かれたものなのに
現代の私たちにとって生生しく伝わる内容であって、
理想を強く語った哲学書と違い人間としての性をよく理解して、
自然にあるままの姿、あるべき姿を捉えようと努めるところから、
自分たちがきづくべきこと、意識すべきことやなすべきことを
訥々と語る口に、無理のない生活感があって人間くささを感じる。
たとえば「坂の上の雲」の登場人物に感じるような先人達への身近な感覚がある。
限られた人生を大切に考えているところでは、
当時でも決して時間がゆっくり流れていたわけではないのだなと
安心して親近感を感じるし、徳を最上位に置き、自らを戒めて
しかし自然体で努力しようとする思想には、儒と通じるところを感じる。
「賢者は現在のことに喜んで生き、将来のことに不安がない」といった
ような節では、GTDのエッセンスに近いものもある。
自分にとって大切な言葉が多く、何度も読み返す一冊。
自らの死によって思想を証明した偉人
★★★★★
本書の解説に、セネカが皇帝ネロに自殺を命じられ、平然と死んでいった様子が載っている。その死に様は、まさに彼が真理に仕えていたことの証明だろう。自分が今すぐにも死ぬ可能性があることは、誰もが知っている。しかし、皆自分が死なないかのように生活している。『人生の短さについて』は、このような我々をまどろみから覚ますことのできる名文である。
考えさせられます
★★★★☆
時間を無駄に過ごすと、
人生は短く感じられるもの
無駄に過ごしている人には、
いくら時間があっても足りない
自分のために時間を使え
時間は有限ではない
そのようなことを具体的な人物の例をあげて紹介し、
時間について思考を深めてくれます。