「労作」の噂に偽りナシだが、・・・
★★★★★
行為無価値と結果無価値、さらには、通説と前田説で争いがあるテーマ(論点)等については、それぞれの説に準じた答案例が用意されている。答案のスタイルやボリュームは従来型司法試験に沿っている感じだが、設問自体が現行司法試験より事案を絞り込んでいるため、これで必要十分。現行司法試験対策としては、(1)あてはめを丁寧に行うこと、(2)判例や反対説を検討する(姿勢を見せる)こと、等に留意することで十分対応可能でしょう。費用対効果の面からみても、「おつりがくるほど」と思われます。
気になる点を一つ。
「・・・と解する」という言い回しは、わたしが受験した頃は、「・・・と解釈する」という意味で使われていました(これは今でも変わっていないはず)。
「このような場合には、・・・になると解する(のが相当である)」というように、判断基準を構築する際に持ち出されるのが解釈論です。
したがって、問題提起→規範定立→あてはめ→結論、の流れのうち、規範定立の部分で使われる表現であって、あてはめで用いるものではありません。
本書では、あてはめでこの言い回しが顔を出すので、誤解される恐れがあるのではと気になりました。
以上は各自で自分なりに修正すれば済むことなので、大した瑕疵ではないでしょう。
歴代の「えんしゅう本」と比較しても遜色はない、と評価します。