DJのサシャとディグウィードは「Northern Exposure」シリーズで大人気となった圧倒的なミックスと賢明な楽曲選択で知られている。果てしなく続く彼らと同時代のテクノ・ハウス系を超えて、サシャとディグウィードは単調なダンス・フロアの残骸から本当の音楽を作り上げる魔法の鍵を見つけた。彼らのミックスは息をして、旅をして、思案し、ひじかけ椅子で聴く者を想像上の素晴らしい旅に連れ出す。耳の裂けそうなダンスの牢獄に捕らえられるより、シュガー・レイで夜を過ごす方がいい人は、サシャとディグウィードの生き生きしてシャーマンっぽさもある音楽の中に癒しを見いだすだろう。けれども、サシャのソロは音楽の女神にふさわしいだろうか? 『Xpander』はサシャとディグウィード共同のスタイルそのままで、ふたりのうち、どちらが魔人ジニーでどちらが主人なのか、よくわからない。ほとんど無意識的に、サシャは「Xpander」、「Belfunk」、「Rabbitweed,」、「Baja」の曲を、聴く者の頭の中へも、宙へも最大限に解き放っていく。もちろんビートが絶大の力を持つのだが、サシャは、きらめくような全体の雰囲気、実験的なハウス系、音楽的シュールレアリズム、ワープ系テクノ等のタッチを加えている。映画『2001年宇宙の旅』(原題『2001: A Space Odyssey』)で、我らの主人公デイブが一瞬のうちに何光年も旅して、結局見たのは自分の年老いた体が卵を食べているところだったという場面をご記憶だろうか? 心が宙に消えてしまい、体は止まっているか踊っているかのどちらかだけという、高まる老化現象の進む不気味な現代のサントラ盤といえよう。(Ken Micallef, Amazon.com)