アメリカは地球だけでなく、手近に残された最後の非武装スポットである天空を、軍事上の勢力範囲に仕立てようとしている。ブッシュ政権にとって、大地と空は、帝国主義的支配の最後のフロンティアだ。『Hegemony or Survival』でノーム・チョムスキーは、われわれがいかにしてこのような状況にいたったか、われわれはどのようなタイプの危険に陥っているのか、そしてわれわれの支配者はなぜ人類の未来を危機にさらそうとしているのかを探り出す。
トレードマークである見事な論法でもって、チョムスキーは世界の覇権をめざすアメリカの姿勢を詳細に吟味し、なんとしても「完全なる支配」を達成しようとする米政府の攻撃的な政策を追跡する。宇宙の軍事化、弾道ミサイル防衛プログラム、一方的軍縮論、国際的合意の解体、イラク危機への反応など、多様な要素をもつ政策がどのように究極的に人類の生存を危うくする覇権主義への衝動と結びついているかをわかりやすく説明する。われわれの時代において、帝国主義は地球を不毛の地に変えてしまうとチョムスキーは主張する。
明快にして厳密な記述と、徹底的な論証に支えられた『Hegemony or Survival』は、今後何年もの間、チョムスキーのきわめて重要で包括的な著作として、幅広い論議を巻き起こすことは確実だ。