現代は、経済活動という一見正当な社会活動が、グローバリズムとかグローバルスタンダードという言葉に載って際限のない広がりを見せている。またこのグローバリズムに載ることが、自らの生活と社会を豊かにし、人々のためになると主張するのが「新自由主義」であり、それを主張するのはアメリカ政府や米系大企業だと。
その一方で、形を変えた搾取が途上国などで起こる。 新自由主義やグローバリズムは、「持てる者は、より多く」、「持たざる者は、さらに手放す」という二極分化を促してしまうと、著者は言う。
鹿児島県地方には、自分の暮らす「四里四方」の飲み物・食べ物を口にしていれば、健康でいられ、かつそれは美味しいという考え方がある。 フランスの農村で発したスローフードと考え方は同じであり、それを経済テーマまで繋げて考えていくことによって、チョムスキー氏の主張にも、初めて頷ける。 私なりに、本書のメッセージを自分の暮らしの中に落とし込んでみることができた。
私は役人や経済学者ではなく、経済の勉強の経験もない、一介のサラリーマンだ。 日頃、お金(特にローンかな)に追い回されるのはイヤだと感じている。 しかしその一方で、美味しいワインも飲みたいし、欲しいものもあるから、身の丈以上にお金が欲しいとも感じる。とても矛盾している。 そんな私に社会経済という面から、自分の暮らしを整理して考えるきっかけとなってくれた本書には感謝している。
スローフードやシンプルライフといったことに興味のある方にも読んでいただきたい一冊です。
みなさんが本書を読むかどうか決めるにあたり、以下の3点を参考までに申しあげたい。
1点目。本書に書かれている内容は、すべて同時多発テロが起こるよりも以前のもの。クリントンがアメリカ大統領だったころに書かれた雑誌寄稿文を集めたものである。現ブッシュ政権への批判を期待しているみなさんには的外れとならぬよう。
2点目。ドキュメンタリー映画を観る限り、チョムスキーの主張のしかたは至極明確なものだった。だが本になると、どうしてこれほどまでに難解になるのだろうか(翻訳のせい?)。気軽に読むというよりも、気合いを入れて読む本。
3点目。だが、チョムスキーの主張はやはり首尾一貫している。難解さを克服し読み進めるために、「政府+大企業」対「庶民」という対立構図の中で話が進んでいくことを常に意識されるとよいだろう。