辞典としてではなく基本用語集として
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項目として1009個の用語が掲載されています。この数を辞書として見ると、……何とも頼りない気がしますね。3つ星をつけておられる方がおられますが、私もうなずけます。ところが、本書を「基本用語集」として見たらどうでしょう。今まで辞書と思っていた本書の、何か別の側面が見えてきそうな気がします。
本書には1009の基本用語が掲載されています。これらを覚えたら、社会学の全体像が見えてきそうな気がしませんか。大学受験時代、このレビューをご覧の多くの方がお世話になったであろう某社の『日本史B用語集』には「独立の説明文を付したもの(用語)約6400」とあります。高校生の時にこれらを縦横無尽に使っていたのです。1009くらいなら、たとえ「全部を暗記する」としても何とかなりそうです。
本書は「基本用語集」として秀逸な書籍です。さらに、本書の索引は和文事項索引だけでなく、和文人名索引・欧文索引さらには文献索引が付いています。「文献の逆引き」には「文献索引」が役立つでしょう。また、原著を読んでいて「日本語としてなら知っているはずなのに、英語で書かれているからついつい基本的なテクニカルタームに引っかかる」という経験はありませんか。本書は欧文索引が充実しているので原著を読む基礎体力作りにもこの「用語集」は使えるでしょう。
院試を念頭に置いている学部の方、マスターに入りはしたけれど、「意外に自分は基礎体力がないなぁ」と思っている方、どうぞ一度本書を手にとってください。ただし一つお願いがあります。その際には「これは基本用語集なんだ」と思いながら手に取ってください。
辞書は素直に使うと辞書です。しかし、社会のあらゆる事象を斜から見るのが社会学の視点です(例えばデュルケームの自殺論)。では、その社会学の視点で本書を見るとどうか。なんと実は、本書は「基本用語集」だった。意外な事実の発見です。
用語集として安価とは言い難いですが、心理学などと違い基本用語集が出版されていない社会学の領域においては一冊手元に置いておいて損はしないと思います。