認知言語学についての基本概念が分かります。英文もそれほど困難ではないし、例文も分かりやすいので、認知言語学について初心者の僕にも理解しやすかったです。

このテキストでは、認知言語学の現在形を知ることができる。
David Leeの著作をはじめとするこでまでのテキストでは、

背景的知識が重視されてきた。私は背景的知識がこのテキストではあまり重要視されていない気がする。従って、今現在ある認知言語学の全体像は見ることができるが、なぜこの言語理論において重要な人間の認知能力が言語現象へと反映されているのかということは感じることができなかった。

　ある意味で、初心者にとっては「有害」となりうる書は、認知言語学には数知れない。理論の前提や、主張の意義を自分のものにしないままに認知言語学を志してしまうと、流行を追い続けるだけで、自分が何をしたいのかがわからなくなる危険があるからである。

　生成文法でも優れた入門書は最近は多いですが、この本も非常に良書ではないでしょうか。

　特定の理論にこだわった書き方はしていないし（著者であるクロフト、クルーズの考え方はもちろん反映されていますが）、柔軟かつ公平な視点で書かれています。何より問題解決型を意識して認知言語学の基本概念が紹介されている点が素晴らしいと思います。私が感慨を持ったのはLexical Semanticsで有名なクルーズが共著で書いている点です。共著者であるクルーズも実力者ですので、それはそれは凄い、丁々発止のやり取りのある入門書だと思われるでしょうが、結果としては章毎に筆者が代わり、独自の新しい概念が出てくると期待すると肩透かしを食らう感があります。
　しかし、クルーズによる章は明快な議論というよりは、絶えず聴き手にも著者と同じ思考と、読者自らが答えを見つけねばならないような労苦を強いるので、初心者には厳しいかもしれません。
　認知言語学の入門書と役立つ本には、テイラーの本をはじめ、上述した危険性のない、優れたものが沢山あります。きちんと認知言語学を学びなおしたい、あらかじめ入門書は読んだが、まだ物足りないという方には最適です。専門家が読んでも得るものがあるのではないでしょうか。おすすめです。