文法化の古典
★★★★★
文法化とは、ある言語の「(単)語」が単なる「語彙」でなくなって文法的な機能を担うようになって、自立語から付属語(語尾など)に変化する過程を指します。我々の言語の文法的標示の全てがこのようにして生じたとされています。たとえば、日本語の助詞「へ」は、「あたり」などを意味する名詞「へ」から来ていますし、動作の時間的あり方を表す「て(い)る」の「いる」はもともと自立した存在動詞です。語が文法化する現象は1990年代から言語学の大きなテーマの一つです。国際的な文法化研究には三つの「古典」があります。一つはLehmannのThoughts on Grammaticalization, 一つはHeine, Claudi, HunnemeyerのGrammaticalization、そしてもう一つは本書です。その辺の言語現象に興味を持つ人なら、ぜひ読んでおきたいものです。訳者は日本において文法化研究の第一人者の一人で、この訳は非常に丁寧です。誤植などは見あたりませんでした。