当時渡辺香津美が言ってました。
「マーカスがソロやバッキングで最新の技術を披露してくれたんだ。でも、マーカスの音数が増えるほど、逆にロビーのベースの音がどんどんモダンに聴こえて来るんだ。」
これぞ真髄!!
そして香津美のギターが縦横無尽に走り回る。その凄さはソロよりもむしろバッキングにある。幾重にも、そして実に巧妙に重ねられたバッキングギターフレーズは、リズムセクションを更にドライブさせる。
これぞ、史上最高のリズム隊!!
渡辺香津美のアルバムは善し悪しというか、アルバムの出来映えがはっきり別れてしまうように感じられるのがこのアルバムあたりからだと思う。本人の六弦が技術的に超一流であり、メンバーが超一流でも面白いアルバムが作れない事もある証明のような作品に本作もなってしまっているような気がする。
周りで何が起こっても、決して動かない、スライ&ロビーの「レゲエ・リズム隊」って、なんだこいつら!?
ためしに最後の「All Beats Are Coming」。マーカスがどんな激しいチョッパー(古いねえ、今はスラップって言うんだよねえ)をしようと、オマーがどんなに暴れようと、スライ&ロビーは決して動じない。
この二人がいたからこそ、香津美は暴れることができたのだし、一方のマーカス&オマーも、ドッカンドッカン暴れられたのだろうと思う。
同じ楽器が二組ずついるのは、古くは、オーネット・コールマンの「フリー・ジャズ」における“ダブル・クインテット”、新しいところでは90年代キング・クリムゾンの、曰く“ダブル・トリオ”編成がある。
けっして目新しいものではないのだが、出てくる音の新しさは、決してクリムゾンにひけをとらない。むしろ、それ以上だ。