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歩兵の本領 (講談社文庫)

価格: ¥637
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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男ばかりのあっさり系物語 ★★★★☆
1970頃の自衛隊を舞台とする連作短編集だが、執筆されたのは、2000年頃。
著者が描く自衛隊は、国防云々といったハイレベルなものではなく、自衛官らの人間模様の様々だ。
しかも、登場する自衛官らは、隊内での階級はかなり低く、志も低く、「何となく」自衛隊に入隊した自衛官が多い。

そして物語は、序盤から、笑いを誘う。
自衛官の宿舎を、夜間も交代で見回るのだが、幽霊が出るという噂が広がる。
話に尾ひれが付いて、段々と収集がつかなくなってくるのだが、締め括りが印象的だ。

こんな具合に、笑いと人間味を伴いながら物語は進むが、最後は自衛官を辞めるという話になっている。
それにまつわる悲喜交々のエピソードは、大変興味深くて、この部分は特に面白い。

ただ、全体を通して、作品が軽妙である事が目立ち、著者独特の「泣かせ」的要素は少ない。
心の底から突き上げられる様な、細緻な人間模様を期待して読むと、アテが外れる。

男ばかりの、あっさりとした物語で、気張らずに読む事が出来る。

新しい世界を知る面白さ ★★★★☆
自衛隊に興味があるとかないとかの話ではない、と言うのが正直な気持ちです。
と言うか、とにかく知らない世界を垣間見る。それが自衛隊だった、と言う感じがまず最初に思ったことですね。
特に、1970年代を学生で過ごした、ポスト団塊世代の人には感慨がひとしおかなぁ。
自分が学生を過ごしていたあの時代に、こんな青春?を過ごしていた同世代の若者がいたなんて、きっと信じられんでしょう(私もその一人です)。
こんな世界があったのか。その発見が新鮮です。
また、この時代には、まだまだ太平洋戦争の記憶と従軍者(例えば私の父のような)が現役で世の中にいたんだなぁ、と。
これもなんだか新鮮な発見でした。
短編の一つ一つはいろんな視点から描かれています。とにかく、オトコくさいな。言い意味でね。ほぼ女性の登場場面はありませんから。
そのわりには女の人の話をしようとする登場人物。なにやらほほ笑ましい気もします。

全体的にペーソスと言うか、情感と言うか。なかなか趣の深い作品ばっかだった気がしますね。
この本がきっかけです!! ★★★★★
私はこの本をきっかけに浅田中毒になりました!本となると挫折することしばしば。でもこの本はスラスラ読めたので初心者でも大丈夫だと思います。自衛隊に興味ある人はなおいいでしょう。なんせ話の中身は自衛隊ですから。今の自衛隊とは環境も規律も違うので、こういう時代もあったんだなと思いながら読んで欲しいと思います。時代風景やその時代の自衛隊員は何を思っていたのかを感じとって欲しいと思います。そして、おおいに涙して下さい!!
浅田次郎が描く自衛隊 ★★★★★
学生運動華やかりし頃、はたまた高度成長真只中の1970年、事情を抱え自衛隊という特殊な社会に身をおいた人々を描いた連作短編集。
二年毎に至急される退職金を目当てに下士官への昇進を断り続け、部屋の主となっている古参兵のエピソード、旧軍生き残り予科練出身の老下士官のエピソードに始まり社会から隔絶された、階級社会のそのまた最下層の兵士たちを描く。
旧軍さながらの体罰・しごきが残る営内班生活が描かれれば、一方で浅田次郎のこと、奇妙な人々を描きながらその視点はやさしく収録された作品の最後にはホロリとさせる・・・。
保証人倒れで妻子を抱えた境遇で自衛隊に入った新入隊員に、営内班の全員で少ない給料から金を出しランドセルを買うエピソードにいたって最高潮に達する。また最終作では自衛隊を辞めることを決意した主人公に最後にわざと殴られるベテラン軍曹のエピソードも感動(ちょうどリチャード・ギア主演の映画「愛と青春の旅立ち」に登場した訓練担当の軍曹にも印象が似る)。
俗世間から隔絶されその成立ちから色眼鏡で見られるなど、奇妙な組織・人物たちという描き方だが、その底には著者自身がかつて属したという組織への愛情がにじんでいて、それがまたなんともいい雰囲気を残す。
歯切れが悪いような・・・。 ★★★☆☆
自衛隊員の物語です。日本の自衛隊は、戦争をしないと誓った軍隊という人類史上稀に見る高貴な組織です。逆説的な意味ではなく、こういった軍隊は本当になかったわけですし、日本人にしか生み出せない存在ではないでしょうか。憲法問題も絡んで自衛隊論議は盛んですが、そういう自衛隊は国民に尊敬されているとは言いがたいです。自衛隊員の素顔とは。自衛隊員は何を思っているのか。自衛隊員の経験のある著者でなければ書ききれない物語だろうと思います。自衛隊にはこういう人たちがいるのか、とか物言わぬ自衛隊員の内面に宿っている感情はこんなんだろうか、とか自衛隊員とはかなり厳しい世界だなというような自衛隊員のリアルな姿を想像することができるエピソード集にはなっていると思われました。反面、思い入れが強すぎるのでしょうか、全般的に歯切れの悪さが否めないです。どうしたのだろう、という感じがしました。著者がそれだけ自衛隊に対する愛着が深いのでしょうか。自衛隊に関心のある方、浅田作品に飢えている方にお勧めです。