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関ヶ原島津退き口―敵中突破三〇〇里 (学研新書)

価格: ¥830
カテゴリ: 新書
ブランド: 学研パブリッシング
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リアルで秀逸な関ヶ原外伝 ★★★★★
あの有名な関ヶ原の「島津退き口」だけを、一冊かけて掘り下げた本。

「島津退き口」というと、島津義弘の勇敢さだけがクローズアップされがちだ。
だが、そもそもわずかな兵力で関ヶ原に臨まねばならなかったのは、彼が政治的に難しい立場にあったからこそ。
そのあたりの義弘の苦悩も丁寧に描かれていて、「猛将」というイメージだけではない人物像が浮かび上がってきます。

退き口そのものについては、そこに参加した人の一次資料がとてもよく残っていることに驚く。
そのため、まるで昨日のことのように状況がリアルに伝わってきます。
薩摩では、この退き口が非常に重要な遺産として残されたことがよくわかります。

最後のエピソードが特に印象的。
退き口から数十年後、当時の話を聞こうと薩摩の若者たちが退き口を生き延びたある武将のところに行く。
すると彼は、若者たちを前に「関ヶ原というは」とだけ言って絶句し、そのまま涙を流したという。

大局を見る歴史本もいいですが、こうした「顔の見える」歴史本はやっぱり面白いです。
関ヶ原と人を描いて「空前絶後」の著作 ★★★★★
桐野作人氏の『関ヶ原 島津退き口-敵中突破三○○里』(学研新書/790円+税)をページをめくるごとに感嘆しながら読んだ。
薩摩のつわものたちの剽悍決死のますらおぶりはもちろんだけれど、島津とほかの大名たちとの関係、さらには島津内部の力学までも細緻に解き明かしている著作である。
帯には「空前絶後の撤退行」とあるが、この本自体が関ヶ原をテーマにしたものとして「空前絶後」といっていい。
義弘公は光も影もある、しかしあきらかに当代随一の武将。この人物の周りにいかに魅力あるキャラクターが蝟集し戦い散って行ったかを思う時、その真中にあった星の輝きを思うのである。戦国薩摩及び薩摩隼人を活写し得てあまりある好著である。