ロマンに満ちた詩と、ドラマ溢れる生涯
★★★★☆
ジョージ・ゴードン・バイロン。私が知る世界の詩人の中で、こんなに複雑で、興味深い人格と人生を持った詩人は他にいない。文句なしの一位(ちなみに二位はフランスの詩人ヴェルレーヌ)だ。
彼の詩はロマンチックで、激情的で、しばしば背徳的だ。まるで永遠の放浪者の舟歌のようだ。劇作には「カイン」「海賊」等があるが、これらも詩に劣らず実にバイロン的である。
彼の生涯−−。狂気の家系を持ち自身も狂気に襲われた父、非理知的な性格で、反りの合わない母。野心的、英雄的な性格に生まれたにも関わらず、足には生まれつき障害があり、憧れていた軍人にはなれなかった。上級生に虐められていた後輩を庇って、「代わりにぼくを殴れ」と言った学生時代。初恋では手ひどく失恋、その後多くの恋愛を経験するが、最初の妻アナベラや、私生児を産ませた友人の妹クレアなど、彼に泣かされた女は数知れずである。「チャイルド・ハロルド」の発表・ヒットによって、一夜にして時代の寵児に。そして腹違いの姉オーガスタとの恋。友人のシェリー等に対する不義理。動物好き(熊を飼っていた)。常に反抗的なスタイル、挑発的な詩作品。最期はギリシア戦争に義勇軍を率いて参戦し、ミソロンギの地にて果てる−−。
なんという矛盾した性格。なんという正義と不道徳の混交。なんというセンセーショナルな激動の人生。小耳に挟んだ彼の人生が余りに面白くて、そして余りに理解しかねて、詩集以外に2、3冊伝記を読んでしまった。まあ伝記によってかなり評価が違うものなので、その位の冊数は読んで当然だが・・。
それにしても、私はバイロンという人間を知って、エマソンが昔教えてくれた「人間に一貫性を求めるな」という言葉が本当にしみじみと身に染みたものだ。
この対訳詩集は、主要作品が分り、原詩も読め、最後に作者の簡単な伝記もあって入門の一冊として非常に適していると思う。この本を一読して、その後更に他のバイロン本を読んで、ぜひこの格好のおもしろ人間を研究してみていただきたい。学ぶものが沢山あると思います。
ロマンに満ちた詩と、ドラマ溢れる生涯
★★★★☆
ジョージ・ゴードン・バイロン。私が知る世界の詩人の中で、こんなに複雑で、興味深い人格と人生を持った詩人は他にいない。文句なしの一位(ちなみに二位はフランスの詩人ヴェルレーヌ)だ。
彼の詩はロマンチックで、激情的で、しばしば背徳的だ。まるで永遠の放浪者の舟歌のようだ。劇作には「カイン」「海賊」等があるが、これらも詩に劣らず実にバイロン的である。
彼の生涯−−。狂気の家系を持ち自身も狂気に襲われた父、非理知的な性格で、反りの合わない母。野心的、英雄的な性格に生まれたにも関わらず、足には生まれつき障害があり、憧れていた軍人にはなれなかった。上級生に虐められていた後輩を庇って、「代わりにぼくを殴れ」と言った学生時代。初恋では手ひどく失恋、その後多くの恋愛を経験するが、最初の妻アナベラや、私生児を産ませた友人の妹クレアなど、彼に泣かされた女は数知れずである。「チャイルド・ハロルド」の発表・ヒットによって、一夜にして時代の寵児に。そして腹違いの姉オーガスタとの恋。友人のシェリー等に対する不義理。動物好き(熊を飼っていた)。常に反抗的なスタイル、挑発的な詩作品。最期はギリシア戦争に義勇軍を率いて参戦し、ミソロンギの地にて果てる−−。
なんという矛盾した性格。なんという正義と不道徳の混交。なんというセンセーショナルな激動の人生。小耳に挟んだ彼の人生が余りに面白くて、そして余りに理解しかねて、詩集以外に2、3冊伝記を読んでしまった。まあ伝記によってかなり評価が違うものなので、その位の冊数は読んで当然だが・・。
それにしても、私はバイロンという人間を知って、エマソンが昔教えてくれた「人間に一貫性を求めるな」という言葉が本当にしみじみと身に染みたものだ。
この対訳詩集は、主要作品が分り、原詩も読め、最後に作者の簡単な伝記もあって入門の一冊として非常に適していると思う。この本を一読して、その後更に他のバイロン本を読んで、ぜひこの格好のおもしろ人間を研究してみていただきたい。学ぶものが沢山あると思います。