真っ当な中級・上級向け英国発音学習書
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書名からもわかるとおり、既に出ている英国発音教本の"English Pronunciation in Use" (Mark Hancock)の続編ともいえる。どちらも、英国発音の練習書として比類のない良書。
巷では、英語ブームに便乗して「英語喉」やら「英語舌」やらわけのわからない発音教本が溢れているが、どれもこれも、学問的根拠の全くないデタラメな説明に終始していて、専門家から言わせれば噴飯もの。
そんないい加減な教本を何冊もやるくらいなら、Hancockの本とこの本を用いて何度も練習した方がはるかに効率よく英語の発音を身に付けることができる。Hancockの本は、個々の英語の音の練習がメインになっていたが、本書では、音の連結や脱落、あるいは句や文単位での音調などに主眼が置かれていて、さらに、世界中の英語(インドなまり、日本語なまり、スペイン語なまり、など)にも目配りがされている。
やや値は張るものの、CD5枚とCD−ROM1枚が付属しているので、それほどべらぼうな値段というわけでもない。とりわけ、CD−ROMはよくできていて、本に沿ったさまざまな練習が行える。
英語発音の上級とはこういうことだったのか
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外国語として英語の発音を学ぶ場合、最後に残る難関は何なのか。本書はEnglish Pronunciation in Useシリーズの上級編として、この問題に答えている。本書では、個別の音の発音についての解説・練習は少ない。これらは既に問題がない読者を対象としているためだろう。重点はストレス(単語、文)、リンキング、リダクション、文章の区切り、イントネーションといった項目である。これらは、個々の音の発音以上に話し言葉に特有な現象であり、これらを自在に操れることが上級者の証である。
イントネーションは内容に関係ないとか、感情で勝手にメロディーになるとか聞くことがあるが、でたらめを信じてはいけない。イントネーションの違いは時として決定的な意味の違いを生むもので、話し手の感情だけでなく思想を伝える重要な手段である。大事なことは、これは効率的に学習することができ、同時に、きちんと学習しないと外国語として英語を学ぶものには完全に理解し使いこなすことはできないことである。
本書では見開きの左に解説、右が練習というこのシリーズの形式を踏襲している。説明は詳細だが分かりやすい。練習量も豊富である。全体として、上級の学習者が自分の思想を正確に伝えるための発音のやり方を学ぶのに大変役立つものとなっている。
本書では標準的なイギリス発音(BBC English)をベースにしているが、イギリス各地、米、加、豪、南ア等のネイティブ・スピーカーの発音だけでなく、非ネイティブ・スピーカー(印、日、中、西、ポーランド)の発音も積極的に活用している。原理主義的ネイティブ・スピーカー至上主義者には理解不能だろうが、上級者向けの本書だからこそ意味がある。一本筋が通った良いテキストである。