現在(2010年)読むと逆に新鮮
★★★★★
もはや「ベルリンの壁」「東ドイツ」という言葉さえ死語と化していますが、当時(手元の版は1971年で23刷!)は冷戦の最中であり現実的な話だったのでしょうなあ。
敵を欺くには味方からと言うが、本作品の主人公も作中で敵中で欺いているのか、欺かれているのか、それも味方に!?という困難な状態に陥る。ここから先はネタばれなので詳しく書かないが、複雑なパズルを解く様に終盤になだれ込む辺りはジェットコースターの様なスピード感で一気に読んでしまった。
今読むと共産主義の「同志」とか「人民の敵」「労働者の国」と言った単語がもはやギャグにしか見えないのが難点でしょうか。
古典的だが名作だと思う。
題名からしてかっこいい。
★★★★☆
中学時代に惹かれて読みました。懐かしい。古き良き時代のスパイものという感じですね。
冷戦が生んだエスピオーナジュの名作
★★★★★
奥付を見ると昭和53年5月発行とある。出てすぐに読んだのだ。当時、この本は決して捨てないで持っていようと思った。
『東欧革命』(岩波新書)を読み終えたとき、本書のことを思い出した。
で、段ボール箱をひっくりかえし、半日かかって見つけた。
ところどころ憶えている程度で、ほとんど忘れていた。私は読み終えると、片っ端から忘れてしまうのだ(老人力か!)。結末を憶えていないのは幸いだった。が、最後のページにきて、思い出した。
「よせ!」とリーマス(主人公。ジョン・スマイリーのシリーズなのだが、本書にはスマイリーがあまり登場しない)に心の中で叫んでいた。わかっているだけに最後のページをめくるのがつらかった。
重量級のエスピオナージュだ。
それにしても、冷戦を招いた「共産主義」とはいったい何だったのか……。
諜報の世界を垣間見ることができる
★★★☆☆
多分、本書は私が初めて読んだスパイ小説だ。正直、小説として格別優れているとは思わなかった。スパイ小説の世界ではこの作品は最高峰に位置づけられているとのことだが、スパイ小説を読まない私にはスパイ小説としての本書の魅力を評価することはできない。
本書は冷戦自体のヨーロッパを舞台としたもので、古臭さを感じる読者が少なくないものと思われるが、諜報の世界は厳として現在でも実在するものであり、諜報、特にヒューミントのテクニック自体はほとんど変わっていないと思われる。かつて情報機関で勤務した経験のある著者が描く諜報の世界から、我々が学ぶことが出来ることは少なくない。
ストレートに読ませる、スパイ小説のクラシック
★★★☆☆
本書は、英国におけるミステリーの頂点、「CWA(英国推理作家協会)賞」の’63年度、ゴールド・ダガー賞(最優秀長編賞)受賞作であると共に、アメリカにおけるミステリーの最高峰、「MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞」・通称エドガー賞の’65年度、ベスト・ノヴェル(最優秀長編賞)受賞作でもある。
英米のミステリー大賞を両方受賞するという快挙をなした、“スパイ小説の金字塔”と呼ばれる、もはやクラシックの風格さえ漂う作品である。
従来のスパイ小説が007のように、超人的な能力の持ち主である主人公が、手に汗にぎる危機一髪的な事件で活躍する≪神話≫であったのに対し、本書では、われわれ同様血のかよった人間である諜報部員の真実の姿を、はじめてシリアスに活写してみせたところが、当時高い評価を得た所以だろう。
物語やシチュエーションの古さは否めないが、最近のスパイ小説にくらべればシンプルにも思える筋立てで、最後までストレートに読ませる。どうも最近の小説はどんでん返しが多くて・・・という読者には向いているだろう。恋愛もほどよく落ち着いてストーリーに織り込まれている。主人公リーマスの心からの叫びをぜひ聞いてもらいたい。
余談になるが、私は「ベルリンの壁」崩壊直後の2月に東ベルリンと東ドイツを訪れたことがある。当時の曇った冬空と“寒い国”を思い出しながら本書を味読した。