【セブン-イレブンで24時間受取りOK・送料0円!】 著者/訳者名:グレアム・グリーン/著 加賀山卓朗/訳 出版社名:早川書房 シリーズ名:ハヤカワepi文庫 38 グレアム・グリーン・セレクション 発行年月:2006年10月 関連キーワード:ヒユ-マン フアクタ- シンヤクバン ハヤカワ エピ ブンコ 38 グレアム グリ-ン セレクシヨン ひゆ-まん ふあくた- しんやくばん はやかわ えぴ ぶんこ 38 ぐれあむ ぐり-ん せれくしよん、 ハヤカワ シヨボウ ハヤカワシヨボウ 6942 はやかわ しよぼう はやかわしよぼう 6942、 ハヤカワ シヨボウ ハヤカワシヨボウ 6942 はやかわ しよぼう はやかわしよぼう 6942 イギリス情報部の極秘事項がソ連に漏洩した。スキャンダルを恐れた上層部は、秘密裏に二重スパイの特定を進める。古株の部員カッスルはかろうじて嫌疑を免れた。だが、彼が仲良くしていた同僚のデイヴィスは派手な生活に目を付けられ、疑惑の中心に。上層部はデイヴィスを
文学作品を読了した印象が残る
★★★★☆
週刊文春1979年 総合6位
イギリスの諜報機関に勤めるカッスルは、前任地南アフリカからつれてきた妻セイラと息子サムとともに、変化の乏しい、つつましやかな日々をおくっていた。あるとき、上層部で情報漏洩事件が見とめられ、 徐々に同僚のディヴィスが疑われることに・・・
62歳の老境にさしかかったカッスルの日々の行動を中心に、ストーリーは淡々と進んでいく。派手なアクションは無縁だが、登場人物の心情が細やかに描かれていて、作品の世界に入っていきやすい。翻訳がすばらしいということなのだろうが、場面、場面を、まるで絵を見るかのように想像することができる。
ジョン・ル・カレのスマイリー三部作も、一般的な職業人としてのスパイを扱っているが、本作品の方が、登場人物の悲哀を感ずるところが大きい。特にラストの唐突ともいえる終わり方は、ミステリーというより文学作品を読了したような、強い印象を残す。
カッスルの”釣り合いをとる”という人生観は、個人的にも共感するところがあるんだよなぁ。
「私は人間観察が得意です」という奴にろくな人間はいない
★★★★★
罪とは何か。本書を読了して考え込まずにはいられなかった。
この小説のなかで、二重スパイの母親は息子のことを吐き捨てるように言う。「あの子は祖国を裏切ったんです。」
対して、スパイの妻は言う。「彼は一度、わたしが彼の祖国だと言ったことがあります−息子も含めて」。
この主人公はダブルバインドを負っている。しかしそれは、帯にあるような「祖国と、妻の祖国」ではない。言うならば、個人が自由に幸福を追求して生きるうえで、祖国への忠誠から逸脱せざるを得ず、その結果、最優先していたはずの「幸福」を失うことになるという複雑な二律背反を描いたものである。
東西冷戦の時代の二重スパイを描いてはいるが、東西どちらの陣営をも肯定・否定はしない。モスクワの生活の厳しさが描かれるが、スパイの母が暮らす「リベラルで、礼儀を重んじるサセックス州」の冷たい描かれ方を見れば、グリーンがこのテーマをいかに慎重に扱っているかがわかる。
罪はどこにあるか。何を侵せば罪人となるのか。法か、国家か、家族か、己の良心か。
そのテーマを中心に、ストーリーは丁重に展開する。ラスト近くには、主人公が行った諜報活動についてのあるどんでん返しが待っている。
刮目すべきは、個々の描写の巧みさだ。人物の小さな動きを記すことは、時に、千言万語をつくして心情を述べるよりも印象に残る。
スパイ小説ではあるが、放縦なセックスやバイオレンス、ゴージャスなブランドネームは出てこない。作中、「イアン・フレミングは暴力的すぎる」というセリフがあるのがちょっと笑えた。
ミステリ・ファンからすると…
★★★☆☆
「スパイ小説の金字塔」の帯は期待を裏切りません。
ただし、イワン・フレミングの007シリーズのような冒険活劇では決して
ありません。お間違えのないように。
切なく・哀しい物語です。祖国と妻の母国との間で、揺れ動く二重スパイの
葛藤の物語です。
主人公カッスルが忠誠を誓うべき祖国を裏切る端緒が家族への愛だったこと
に安堵するはず。
心のひだにしみ入るようなスパイ小説ですから、心落ち着けて読んで下さい。
スパイ小説というレッテルは不適切
★★★★☆
本書では情報機関で働く人間達が主に登場するので、本書は「スパイ小説」として位置づけられているが、これは不適切であろう。確かに本書はスパイ小説としても楽しめる。徐々にプロットが明らかになっていく様は見事で、主人公が二重スパイであることが分かったり、意外な人物がソ連との連絡役だったりするなど、最後まで読み物として楽しませてくれる。
しかし、本書は文学としての性格をより強く持っている。家族と国家への愛、信仰の問題など、本書の主題は明らかに文学的なものなのである。特に家族と国家の狭間に立たされた筆者の葛藤の描写は見事の一言に尽きる。
また、本書は訳も優れている。じつに自然で、こなれた和訳である。
スリラーなのは形だけ
★★★★★
体裁は追いつめられていく二重スパイを描いたスリラーですが、濃密な心理描写と運命を案じさせる余韻に満ちたエンディングは、娯楽を追及した作品では味わえないものです。
勧善懲悪のスカッと楽しめる小説や、息抜きとして肩の凝らない読み物を探している場合、この作品はお勧めできません。その手の目的ならこの作品より優れた小説がいくらでもあります。
この小説を読めば、裏切りとは何か、あるいはその他色々なことについて考えさせられると思います。
いわゆる文学全集にのるような作品ではないかもしれませんが、少し腰をすえて、じっくりと読んでみることをお勧めします。