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情事の終り (新潮文庫)

価格: ¥662
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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芳醇な香りがする小説 ★★★★★
私は映画「ことの終わり」が好きで、ぜひこの原作を読みたいと思っていて、公開からだいぶ年月を経て、やっと読書する機会に恵まれました。

まず最初に感じたのは、非常に文体が美しいということです。この小説が書かれてから数十年を経ているので、読みにくいかな?と危惧していましたが、原文も翻訳も素晴らしいのか、読みやすかったです。
映画で見た映像や俳優達を想像しながら読んだので、私にとっては功を奏したのかもしれません。

無神論者の主人公のベンドリクスは作家で、高級官吏の妻、サラと道ならぬ恋に落ち、情事を重ねます。空襲の日に、突然サラから別れを告げられたベンドリクスは、愛が憎悪に変わり苦しむ日々を送っていました。そんな彼が、あることをきっかけに、サラが自分のもとを去った理由を知るのです。
その経緯の描写と展開が非常に見事で、嫉妬と憎悪に苦しむ一人の男の葛藤が克明に綴られ、映画で主役を演じたR・ファインズの姿を、つい思い浮かべてしまいました。
小説の終盤、やがて彼が知ることになる、嫉妬の対象だった、あるひとの真の姿と「奇蹟」が感動を呼び、ラストの結びの一文がさらに深い余韻を残します。

ベンドリクスが、サラと恋に落ちる食事の描写「玉葱料理」の一節も見事だし、二人の情事の描写も美しく、文章に色彩を感じました。
映画は、原作を脚色した部分があり、割愛されたエピソードも多いですが、原作の味わいを損ねない上質な作品に仕上がっています。
原作である小説は、芳醇な香りに包まれた極上の愛と信仰の物語だと思いました。
神の前に永遠の愛を誓われたあなたへ ★★★★★
ブックカバーの背面に、
「激しい恋が、始めと終わりのある“情事”へと変貌したとき、
“あなた”は出現した。
“あなた”はいったい何ものか。
・・・
絶妙の手法と構成を駆使して、不可思議な愛のパラドクスを描き、
カトリック信仰の本質に迫る」
とある。
浮気、情事、不倫・・・いろいろあろう。
その趣も様々であろう。
物語の中で窺い知るカソリックの倫理感は新鮮である。
また強く、深いものを感じる。
生きることに、これほど悩まぬ自分に気づく。
「存在するかもしれない何か」(本文から)
をこの物語のように感じるだろうか。
胸のうちでの自身との対話の中に、異なる意見を超えた
“もう一人の自分”を感じることはある。
何とも不可思議な体験であろう。
未熟で読むのに手こずった。
おそらく半分も理解していないだろう。
再読する本。











深く重い主題 ★★★★★
神の愛と信仰と、主人公のモリス・ベンドリクスが友人ヘンリ・マイルズの妻のセラ(サラ)とする不倫が主題です。この本は辛い恋愛を体験したすぐ後に読みました。ですので、モリスとセラの気持ちが痛いほど心に染みました。

Graham Greeneは大人になってから、自分の意志で、聖公会からカトリックに改宗した人です。カトリックの聖人のダミアン神父、この方はハンセン病の施設に派遣され、自身もその病になりましたが、プロテスタント側から「彼はもともと女性関係に甘いところがあり、病気に感染したのはそれが原因である」とする批判があり、Greeneはそれに対して、少し記憶が曖昧ですが、「もしもそうだとしても、そこにこそ神の栄光がある」と反論していたと思います。

品行方正な人たちと神の愛ではなく、世間では蔑まれる不倫をする男女と神の愛という、一見矛盾するようでありながら、深く重い主題を扱っています。親鸞聖人の「言わんや悪人をや」に通じるところがあるのではないでしょうか。神の考えは人間の理解を超えた深いところにあると思うからです。

以上、原著のThe End of the Affairのレビューに書いたことを、こちらに転記しました。原著のGreeneの文体はとても美しいのです。ですが、日本語と英語の語順の違いから、これを翻訳で再現するのは不可能だと思います。原文はそれほど難解ではないので、初めて読む英語の小説としても良いと思います。
「信仰の始まり」 ★★★★★
 小説のタイトルは「情事の終わり」だが、内容は「信仰の始まり」ともいうべきもの。キリスト教は日本人からみると逆説に満ちているが、特に「奇跡」は理解しづらい。そういう点で、この小説はカトリック信仰に関心のないひとには不向きだ。しかし、カトリックの信仰を理解しようとするひとには、フランスの作家ベルナノスとならんでグリーンはとても面白い。特に、本書は「奇跡」を扱っているので、両作家を比較するのも興味深いかもしれない。グリーンには『権力と栄光』という傑作もあるので、併せ読みたい。
 以下は、私的な感想。
 サラァは神と出会ったことにより、情事を終えざるをえなかった。自分の意志ではなくとも、神と対話を始めてしまってからサラァの心は神に奪われてしまったといってよい。その意味では、ベンドリクスが恋敵のように神を憎むのは正当である。サラァの心を得ることの出来なかった男たちは、神を憎む必要はなかったから、サラァによって神に導かれる・・・・(小説には結果が書かれていないけれども)。ベンドリクスの「愛」は与えるものではなく、あくまでも得るためのものであるから、しかも、自ら言うようにサラァの心ではなく「肉体がほしかった」ゆえに、遂にサラァ(神)を理解することはできなかった。いや、あるいは薄々気づいていたのかもしれない。ベンドリクスの反論する、サラァが跳躍したように跳躍することによって、みんな聖人になれるではないか、「もしきみが聖人なら、聖人になることはそんなにむずかしくはないではないか。それは彼がわれわれのうちの誰にでも要求できることだ。跳躍。」という言葉に、おそらく作家の真意があるのだろう。
十字の物語 ★★★★★
 グリーンの傑作とも言うべき作品。この作品は、サラとベンドリクスが別れた「情事の終わり」から始まる。サラはある日、「愛は終わるものではありませんもの」という言葉を残し、忽然とベンドリクスの前から姿を消す。ベンドリクスは、サラが姿を消した真相を探るため探偵を雇う。探偵は、サラの紙屑箱に捨てられていた一片の紙を盗み出すことに成功するが、そこには恋人へと宛てられたと思われるサラの大胆な愛の言葉が綴られていた。サラの新しい恋人に嫉妬したベンドリクスは、彼を探し出すことを決意する。サラの新しい恋人は一体何者なのか?サラの別れの理由は一体何なのか?グリーンが仕組んだ意外な結末は、作品を読んでからのお楽しみである。情事という愛欲に耽っていた男女の「情事の終わり」から始まる物語、作品を読めばこの開かれた世界を感じることができるはずである。