ソニーのことがよくわかった。
★★★★★
「製造・販売業」から「製造・サービス業」への企業変身を説く本書は、製造業ビジネスの将来について一つの方向性を示す好著であろう。製造業ビジネスモデルとデファクトスタンダード獲得は、互いに密接にリンクしている。ソニーに勤務する著者は、ソニーと他社との企業間アライアンスをリードし、フィリップスと手を組み、ソニーが開発した非接触型ICカード(JRのタッチアンドゴーカード)規格の国際標準化を成功させている。現在は、ソニーが発売するプレイステーションポータブル(PSP)に搭載されている6cm径の光ディスク(UMD)の業界統一規格標準化をリードしている。本書の内容は、技術規格標準化を中心に置いて展開されているが、標準化の門外漢にもわかり易いように、JR東日本のスイカ(Suica)やJR西日本のイコカ(ICOCA)を21世紀型ビジネスモデルの実例として取り上げている。
多種のフォーマットが混在しているDVDの標準化でわかるように、エレクトロニクス製品のデファクトスタンダードが成立しにくくなった。著者は、本書で「ユビキタススタンダード」という新しい言葉を読者に紹介し、デファクトスタンダード全盛時代の次に来るべき時代について語る。また、エレクトロニクス産業だけでなく、広く製造業が21世紀に直面している低収益という問題に対して、一つの解をわかり易く読者に伝える。その21世紀の企業ビジネスを伝える著者の視点が、すべてにおいて独特であり斬新でもある。次の時代に勝ち残るべき企業経営者および中間管理職にとって必読の一冊だ。