アーチー・シェップは時代によって、さまざまな表情を見せる。ジョン・コルトレーンの紹介でインパルスに録音を開始した60年代半ばは、フリージャズの闘士だった。また80年代以降は、スタンダードバラードを淡々と聴かせるオーソドックスなプレイが支持されている。
本作はというと、72年録音作とあって、それらとはまた違った表情をみせる。ストリングスやヴォーカルを加えた大編成による演奏。聴き方によってはポップ的ともフュージョン寄りともいえる作りだが、そこはシェップのこと、強烈な黒人意識に基づいた硬派の作品だ。
タイトル曲<1>はアッティカ刑務所で71年に起こった黒人囚人による暴動をテーマにした曲であり、<6>は71年に脱獄を図ったとして射殺された黒人青年ジョージ・ジャクソンを悼む曲という具合に、シリアスなテーマを扱っている。ソプラノサックスによるソロが印象的な<9>はルイ・アームストロング追悼曲。サッチモ(ルイ)が亡くなったのは71年で、これまた当時の世相を反映した曲だ。(市川正二)
アーチー版フリーソウル
★★★★★
ジャズからゴスペル、ブルース、ソウル、ファンクを取り込んだ大ブラックミュージック絵巻。ボーカルを前面に押し出した極上のフリーソウル!
ガリアーノネタなどレアグルーヴ方面からの評価が最近高めですが、60年代末頃は
フリージャズが停滞してた時期であり71年の今作は、
アーチー・シェップが原点回帰を狙った意図が明確に感じられるほどの
ファンク・アルバムとなっています。
それもただのファンクでなく、やはりそこはアーチー・シェップ。
捩れた感覚とでもいうのでしょうか。
根っこの部分は、やはりラディカルな「フリージャズの闘士」の部分が見え隠れしてます。
何はともあれ、アーチー・シェップの作品の中では一番聴きやすく
初心者にも最適な1枚ですね。
「クワイエット・ドーン」も素敵な曲だと思いますがね
★★★★☆
マニアからは聴きやすくなったと敬遠されがちですが、
逆にそうじゃない人には入りやすいアルバムでしょう。
何はともあれ、タイトル曲の真っ黒なゴスペルファンクを聴くと血が沸騰しますね。
ふだんジャズを聴かない人でも、この曲には興奮するんじゃないでしょうか。
ジャケが気に入った人は、それを信じて買ってもいいと思います。
根底はR&Bだったのか(^^;
★★★★☆
私など不良リスナーの典型みたいなものですから、”A.シェップ=マジック・オブ・ジュジュ”という公式に縛られ、「うーん、難しそう」と尻尾を巻く一人なのですが、少なくとも本作('72年作)は、もうフリージャズとかそんな範疇ではなく、強烈なR&B色に彩られたファンキーな作品として聴いています。
ノリノリ、イケイケな[1]でのブローなどその典型(しかしそのテーマはなかなか政治的にシリアス)で、J.L.ウィルソンのディープな歌声が気持ちい[3]、整然としたブラスとA.シェップのブローがカッコいい[6](これもテーマ的にはシリアスなものを扱っています)などなど、今までの私の中にあったA.シェップ像をいい意味で氷解させてくれた作品といえます。
#と言っても、現時点では”マジック・オブ・ジュジュ”以外は
#聴いたことないんですが(^^;
ジャズに限らず、ポップス/ロック、ソウル/R&Bなど各ジャンルで音楽的な変革が始まった'70年前後に位置する本作にしても、それらの動きを捉えた結果なのかもしれません。
何かこう、R&Bやソウルといった(例え表層的であれ)私にも受け入れやすい部分が根底にあると判ると、もう一度”マジック・オブ・ジュジュ”をじっくりと聴き直してみようかなという気になります。
この手のR&B系には滅法強いギタリスト、C.デュプリーも参加しています。
満足出来る傑作
★★★★☆
米国のサックス奏者アーチー・シェップのアルバムです。この頃のシェップはもっとも創作意欲に溢れており、数多くの作品を世に出しているのですが、中でも頂点に立つ傑作が本作です。ストリングスやパーカッションを含めた大編成のバンドで、ファンクな色合いのリズムを絡めた、壮大なヴォーカル曲が展開されています。シェップ自身のソロはあまり多くないのですが、それでも十分に満足出来る傑作(カル・マッセイの娘の歌を除く)です。