第1章の「疫学とはどういう学問か」という導入部は読みやすく、EBMばかり唱えている人たちにも読んでほしい。
第2章「疫学から考える水俣病」は、その後も薬害、公害の続くこの国の構造を考えさせるケーススタディとして秀逸。
第3章「必要な制度の見直し」は、こうした状況の一端が医局講座制にあることを的確に指摘している。それも相当勇気ある発言である。
小生は筆者と同年代に医学部を卒業した臨床医のはしくれだが、当時は疫学なんてやる人は相当の変わり者などど思っていた。しかし、二〇年近くたって社会医学の分野でも優秀な人材が育ってきていることを喜びたい。
結果ばかり見て医師の批判に終始している社会の方が医師養成機関というものを真剣に見直してほしいと思う。
それにしても、医学書を出版している出版社はこうした本は出せないのが現状なので、やはり岩波書店は必要です。がんばってほしい。