英語史の観点から
★★★★☆
本書はその名の通り、中世英語に関する入門書である。まず、そもそも中世英語とはどんな感じのものだったかを概観。
その後、中世英語の使用(フランス語やラテン語も使われた時代に、誰がどのような場合に英語を使用したか、等)、
方言の詳細、「標準英語」の確立など、中世英語を歴史・文化の側面からわかりやすく解説。
「写本、すなわち獣皮に手で書いた本」のように解説を含めた書き方がなされており、この分野に馴染みない人も読みやすいように書かれている。
あとは中世英語の英語史的、言語学的解説。発音の仕方と現代英語に至る音の変化、書記法、
古代英語をもとにラテン語やフランス語や古ノルド語などからたくさん借用をした語彙の体系、
品詞別に詳しく解説した文法、と続く。巻末には、『農夫ピアズ』や『世を馳せめぐる者』など8作品からの抜粋を掲載。
本書で扱ったことがらをふまえながら、実際の中世英語(初期の、古代英語に近いものが多い)にあたることができる。
中世英語の文化的背景や実際の文法まで、非常に詳しく述べられ、古代英語から現代英語に至るまでの英語の歴史と関連づけて語られている。
入門書という事で、初学者にもわかりやすいようにという意図が感じられるつくり。しかし、
方言の相違や音の変化など英語史の内容や、言語学の用語も非常に多く出てくるので、少なくとも、
英文科などで英語の歴史、言語学を一通り学んだ方におすすめ。文法解説の部分は、ところによってはかなり専門的な内容になっている。