最近の大阪地検特捜部の件がレアーケースではないことを理解。
★★★★☆
仰る通りこの本を読んで事実認定について答案が書けるようにはならないでしょう。しかし第一線で刑事裁判をやってこられた筆者の証拠改竄やすり替えについての実態を読みますと、判例集の有罪の事実認定に対してもう一度考えたくなる本です。資格試験の刑訴の問題は所与の事件は真実、事実であることから出発しますが、現実はそんなに簡単単純ではないということです。裁判員には必読ですね。もっとも裁判員になるかどうかもわかりませんので皆が必読の書というわけでもないですが。刑事裁判について深く考えさせられる1冊でした。
試験対策としては普通の刑訴の教科書とは違いますが、事件、事例に臨む心構えを涵養させてくれる本だと思いました。
元裁判官による名著
★★★★☆
元裁判官であった筆者が,ご自身の経験を踏まえて執筆された書籍である。
類書にあるように,体系的にあるいは項目毎に事実認定の方法論を論じているわけではないので,本書を読んでも事実認定の基本が身に付くということはないと思われる。
しかし,事実認定についての方法論を提示するのが本書の目的ではなく,著者の考える「刑事裁判の心」を提示することにある。
当然のことながら,刑事裁判の原則に忠実にあろうとする元裁判官の手による本書は,刑事裁判に関わる者の必読の書である。
また,自白調書の任意性に関する筆者の意見は,現在の実務的通説とは異なるが,今後,裁判員制度が実施された際には,筆者の意見がむしろ常識として受け入れられるのではないだろうか?