新MoMAビルディングの開館を記念して、MoMAは谷口がこれまで設計した9つの美術館を1冊にまとめた本を出版する。彼が手がけた美術館には、東京国立博物館・法隆寺宝物館、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、長野県信濃美術館・東山魁夷館、土門拳記念館、資生堂アートハウスなどがある。長野の東山魁夷館では、東山魁夷作品の展示スペースの隣に、光を反射する池と庭園が配されている。旧拳母市の城下町に立つ豊田市美術館では、新市街と歴史地区を一望できる設計により、その地の歴史や独特の性質が表現されている。また、丸亀駅前に位置する丸亀市猪熊弦一郎現代美術館は、駅と美術館とを結ぶ広場を内包した設計になっている。『Yoshio Taniguchi: Nine Museums』では、各美術館の設計が解説されるほか、MoMAの新ビルディングが大きく取り上げられている。新生MoMAでは、芸術と建築、そして人間が全体の環境設計にとりこまれている――こうした概念は、日本の茶道の精神に見られるものだ。日本の茶碗は非常に簡素な形と色でつくられているが、ひとたび茶が注がれると、茶の温もりや色、香りを内包するまったく新しい物体へと変化する。それこそが環境というものなのだ。テレンス・ライリーによる谷口吉生論収録。ハードカバー(約25.4×25.4cm / 204ページ / カラー図版141点、白黒図版64点)。