ニューヨーク近代美術館（MoMA）はここ数年、開館史上もっとも大規模な建築プロジェクトのただなかにあった。谷口吉生の設計による新生MoMAは、開館75周年にあたる2004年11月、マンハッタン中心部に再オープンする。総面積63万平方フィート（約5万8500平方メートル）の複合建築様式の新美術館は、改築前の2倍に拡大され、展示・公開講座・教育活動・学術研究のためのスペースが著しく広く再設計されている。谷口は設計草案のなかで、最終的な目標は「想像的かつ計算しつくされた形で光や建築材やスペースを活用し、芸術と人間のための理想的な環境を創出すること」だと述べている。「比類なき現代芸術コレクションを誇る美術館であり、独自の歴史的遺産と現代芸術を融合させた美術館の先駆けであり、マンハッタン中心部に位置する都市建築でもあるMoMAのユニークな個性を保存および強調する美術館」という谷口の明言していたビジョンは、華々しく達成された。

   手ごろな価格の本書では、新生MoMAとその中心となった建築家の全貌が、ニューヨーク近代美術館館長グレン・D・ローリーにより簡潔に語られている。
グレン・D・ローリー著。ペーパーバック（約12.7×17.78cm / 60ページ / カラー図版45点）。