第2巻の物語はその重心のかなりを庶民の抵抗運動においている。虐げられ搾取される庶民、人を人とも思わぬ魔法使い達の横暴、必死の覚悟で立ち上がった数少ない人々、そしてその組織の興隆と廃退、そこに身を投じたもう1人の主人公キティーの挫折と復活、老練なバーティミアスにも理解できない人間の勇気と行動。
これは歴史の大きなうねりの中でうちひしがれ立ち上がる人々の物語、その中で成長する少年と少女の物語である。第1巻よりも複雑にからみ合った権謀術策の渦巻く中での疑心暗鬼と信頼、裏切りと友情、そして勇気の物語は読者を虜にせずには置かない。これを読む子供たちはナサニエルやキティーと共に問題に立ち向かい、そして大きく成長することだろう。そして、そこに大人としてさめた見方を提供するバーティミアスの存在は、この小説を大人の本としても読みごたえのあるものにしている。
ナサニエルは今回も成功を修めて終わる。しかし、更なる慢心を誘うかと思われるその成功にも一抹の悔いがないわけではない。新たなる成長を期待させて物語は第3巻へと続く。