ヨーロッパの町を靴音を響かせて歩いているような楽しい本
★★★★★
池内紀(いけうちおさむ)といえばカフカを思い浮かべるが、
ドイツ文学者でエッセイストとしても、多くの著作がある。
この本「町角ものがたり」はヨーロッパの27の町を巡り
印象を綴った紀行文。ドイツ文学が専門だけあって、都市
の成り立ちや、ゆかりの文学者たちのエピソードが散り
ばめられ、いわゆるガイドブックとは一味違っている。
それぞれの町に4,5日滞在し、町の隅々まで歩きまわり、
ゆったり過ごす、ある意味非常に贅沢な旅をされているよう
で、その5年間ほどの間で旅行した印象を纏めた文章である。
読み進んでいるうちに、自分も石畳を靴音を響かせて歩いて
いるような気分になってくる。
ヴェローナからはじまりドレスデン、ウィーンと続く章の
通り読んでもよし、なじみのある都市を拾い読みしても
良し、休日のゆったりした気分の時に読めば、ふとヨーロッパ
に行ってみたくなるお勧めの一冊である。