どうすれば学会のポスターセッションで効果的なプレゼンテーションができるのかを説明している．ポスターセッションもしだいに紙のきりばりなどに依存しなくなってきているとおもうが，この本ではまだ，のりやはさみのつかいかたにウェイトがおかれている．本の末尾にはさまざまなポスター・セッションの写真とともに失敗している部分の説明が書かれている．成功例もわずかにふくまれているが，もっと成功例をふやしたほうが参考になったとおもう．

　ポスターセッションに関する邦訳の本は古いものが多く、PhotoshopやIllustratorなどを利用して作成から印刷までを全てPC上で行うという現在では当たり前の手法を紹介した本はほとんどない。
　本書もそういった意味では内容は古い。しかしながら、見やすく、受け入れられやすいポスターを作るうえで、フォントのサイズやフォントそのものの選択、効果的な図表の作成方法などは、一度でも作成した経験がないとなかなか判断に困るのではないだろうか。本書ではそういったかなり細かい点についてまで配慮されているため、いろいろと参考になる箇所も多いはずである。また、理科系のこういった「指南本」は、参考例が理工学系のものが多いのであるが、本書は生物系の記述が主をしめるという点で、生物系の読者にはうれしい内容となっていると思う。
　さらにもっともお勧めの点は、「失敗例」が写真つきで豊富に紹介されていること。本書はこの部分を読むためだけでも購入する価値がある。何がどうダメか、という理論的な説明書きだけでは伝わりきらないものが、写真一枚見ればたちどころにわかる。また、著者は心理学にも詳しいのだろうか、随所に見られる「ポスター作成のテクニック」に、心理学的に人の目にとまるようなアレンジングの方法が載っているため、これも十分参考になるはずだ。

　生物・医学系の人ならポスターの作り方、発表法などは羊土社からでている「ポスター発表はチャンスの宝庫」を読んだ方が参考になると思います（値段は高いが効果も高い）。
　今の時代ほとんどの人がコンピューターを使ってポスターを作るはずですが、その際に必要になってくるコンピューターを使った具体的な作成法がこの本には書かれていないのです。
　ただ、別の人も書かれていますが、この本に載っているわかりにくいポスターの実例は参考になります。そのようなものは普通本に載せるのは難しいと思われますので、それを見るために買うのはありかもしれません。そうでないのならば購入はあまりお勧めしません。

　パソコンの普及で、プレゼン準備のためのツールは充実してきたが、道具の良さがアピールのうまさには必ずしもつながらない。この本はポスターセッションに関して、企画製作プレゼンまで、気を配るべき事項を網羅的に述べてあるので、今まで自分が見過ごしていた事がいかに多かったかが思い知らされる。 　この本の一番の売りは、著者が遭遇したポスターの失敗例を２０あまり載せてそのコメントを載せている点である。具体的な失敗例からは学ぶことが多い。 　ただ、本書の方法論に則ってポスターを製作するのに「１６週間が必要」とは、非現実的に感じる。何につけスピードが要求される昨今、最小の手間で最大の効果が得られる方法が求められようが、そのような手法は本書を読んだ後、各読者が自分なりの方法を考えよ、ということなのでしょう。また、パソコンの具体的な活用法までは載っていない。