著者のスタンスは、本書のタイトルにもあるとおり、中庸でときどきラディカル。 すなわち、基本的には中庸だが、あるテーマについては「右」寄り、あるテーマについては「左」寄りの意見を唱え、しかもそれらの意見は極端な「右(左)」ではなく、振り幅の小さな「右(左)」だということである。たとえば、天皇制については反対だが天皇の存在は否定しない。墓制度については反対だが、墓自体の存在は認め、墓参りについてもむしろ賛成している。たいてい「右」か「左」か、保守か左翼か、リベラルか、といったくくり方をされてしまう現代の社会思想に疑問を持ち、「本書を読むにあたっては、右か左かといった考え方から自由になってもらいたい」と書いている。
著者が本書でテーマとして挙げているのは、「主婦」とはいかなる存在か? 戦争の是非、セクシュアル・ハラスメントの境界線は? 「シナ」がいけなくて、「チャイナ」がいいのはなぜか? 歴史教科書について、美人とブス、美男と醜男についてなど…。さまざまなテーマを俎上にのせ、学者の文章を引用しながら、持論を展開。「右」「左」関係なく、時には温かく支持し、そして時には情け容赦なく、一刀両断に弁駁する。
同じ「右(左)」でも、緩やかな「右(左)」といった具合に程度の差が生まれてもよい。そう考える著者は、「右」や「左」に落ちてしまわないよう、バランスをうまく取りながら綱の上にしっかりと立っている。(石井和人)