剣道の歴史において異色とされる宮本武蔵の二天一流は、次のような考えから生まれている。「太刀はひろき所にてふり、脇差はせばき所にてふる事、先ず道の本意也。此一流におゐて、長きにても勝ち、短きにても勝つ」。つまり宮本武蔵の革新は、勝つという1点をただ合理的につきつめたところにあることがわかる。
宮本武蔵が二天一流の奥義を記した本書は、勝つことにおいて何が理にかなうものであり、何がかなわないのかを説いている。構成は地水火風空の5巻からなり、「地之巻」では兵法や二天一流の概略を、「水之巻」では太刀筋や剣術の極意を、「火之巻」では実戦に勝つための要諦を、「風之巻」では他流派との比較を論じ、最後の「空之巻」では二天一流の到達した境地をまとめている。
圧巻は「目の玉うごかずして、両わきを見る事肝要也」などの、切り合う瞬間の動作を細かく記したところ。実戦の緊迫したシーンがここに浮かび上がってくる。また、「構はありて構はなきという利也」と言いきっているのもおもしろいところ。構えや太刀をどう振るかにとらわれず、ただ敵を切る心をもて、それが「理」だ、とするのだ。ここに宮本武蔵の真髄が見えてくる。
本書がビジネス書として読まれているのは、極限で平常心を保ち、相手を観察し、心理戦を制し、環境を利用し、先手を取る、といった奥義から多くのアイデアをくみ取ることができるからだ。(棚上 勉)
必要十分『五輪の書』
★★★★☆
『五輪書』は本当に武蔵が描いたのかについては、ざまざまな異説があるが、
武蔵の死後、二天一流を継承すると主張するものが、数組現れ、
その正統性を主張するため そのうちの誰かが
書いた、というのが有力な説である。
武蔵が書いたとされる『五輪書』を継承していれば、
我が一統こそ 正統であると世間に公言できるからである。
なお「小次郎敗れたり」と言ったという史料は一切、残っていない。
まんがとしては必要十分。
あまりに薄っぺらい本と内容で残念
★★☆☆☆
分かりやすいマンガで読む五輪の書ということで購入したが
まず想像以上にチープな作りでびっくり、文庫本サイズで
ページ数も190ページ弱、しかもマンガがおもしろくない
全然キャラクターに魅力が無いし、ストーリーも現実社会がどうのこうのと
解説しているが面白みがない、これならマンガで読まずに普通に小難しい
五輪の書を読んだ方が武蔵の息吹が伝わってくると思われる
この価格でも高すぎる、今後自分はこのシリーズは一切買わないと思う
グリップとスタンス 「岩波文庫」版のレビューと「まんがで読破」版のレビューが混じって表示されていますので注意してください
★★★★★
この本はもっと精神的なことだけが書いてある本だと思っていました。
意外にも、刀の選び方、持ち方や構え方(グリップやスタンス)、練習法など、現実的なことから始まっています。想像していたのとかなり違っていました。
題名は知っていても、実際に読んだ方はそれほど多くないのではないかと思います。文語文としても特に難解ではありません。分量も大著ではありません。実際に読んでみると、世間の見方とは違う部分も多く、意外な発見があります。
〔追記〕
以上は「岩波文庫」版の感想です。このレビューは「まんがで読破」版の『五輪書』にも表示されています。ご注意ください。
いまいちだった
★☆☆☆☆
内容的にいまいちだった。
漫画でこの本を表現するのは難しいのかもしれないが、
でも残念だった。
落伍者の人生
★★★★☆
五輪書には「戦いの時も平静を保つことが大事である」と水の巻に記されている。
この言葉は、イギリスの特殊部隊SASの教本の中にも引用されるほど、現在の軍人にも必要不可欠な事である。
宮本武蔵は剣聖とまで讃えられる人物であるが、その人生は決してその聖と呼ばれる尊称に相応しいものではなかった。
十三歳で人をたたき殺してしまい、故郷から追い出され
諸国を流浪しながら剣の実力を上げたが、すでに戦乱の時代は終わろうとしている世の中。
宮本武蔵のように如何に剣の実力があっても、組織に馴染めないようなタイプの人間を抱えたいと思う大名は存在せず。
決闘を繰り返し勝利を重ねることで、幾ら名を上げようと武蔵には仕官の口がなく、失意の人生を歩むしかなかった。
こうした時代に取り残されてしまった。落伍者と呼べる人間が、その人生の最後にたどり着いた兵法と勝負の極意。
そこにあるのは兵法や勝負の際の心がけにとどまらず。
剣を振るう上の心のありよう、生きるための信念が書かれている
例えば身分制度が絶対のこの時代に五輪書の「地の書」には士農工商四つの道があり(中略)と説き。それぞれの道が尊いことを説いている。
これも剣士としての道を極めたところで世間から軽視されてきた宮本武蔵だからこそ辿りついた事かもしれませんが
決して間違ったことではなく、老境に達した武蔵がたどりついた真実だったのでしょう。