都市構造を住民レベルから見たアプローチ
★★★★★
1961年10月に、ニューヨークの都市再開発で起こるスプロール化を強烈に批評しているが、いまだ内容は現代の都市が抱える問題をも含まれている。ジェイコブズはハイウェイの都市開発計画反対の先頭に立ち、都市の組織化された複雑さの問題を探り、地域の活性のために再開発と名づけて破壊されて行く以前のコミュニティーを存続を訴えている。 旧市街の複雑で素晴らしい秩序、例えば入り組んだ歩道などによって都市がどう働いているかがよく分析されている。
この本によって都市の複雑な秩序を理解し、政治や経済の為に都市を変更させていくアプローチに疑問を持っていくことも必要なのだろう。都市のスプロール化の状態を防げる手立てもないのだろう。
彼女は、大都市には、困難と戦うために何を必要なのかを理解し伝え、案出していくためには、ボトムアップの情報が必要だといっている。 そうすることによって都市の健康な状態を守ることが出来るのだろう。
地域再活性化を考えるための名著
★★★★★
都市計画や建築などに携わる者が読む古典的名著として、ル・コルビュジェの「輝く都市」(1947)と、ジェーン・ジェイコブスの「アメリカ大都市の死と生」(1961)がある。
コルビュジェは、この書のなかで、近代科学の成果である高層建築などを活かし「可能な限り<人間的な条件>(太陽・空間・緑)を復活させ、歩行者と自動車を分離し、育児などに大きな影響を与えて子どもや大人にも新しい生活様式を提供する<住宅の延長>と名付けられる施設を整える」べきだと主張する。
ジェイコブスの主張する都市のイメージは対照的である。コルビュジェのイメージする都市像を実現させるためのプランニングが、アメリカ大都市では失敗したとし、その基本コンセプトに疑問を投げかける。また、街の活力は、さまざまな人びとが住み働き学ぶという「多様性」によってもたらされるとし、さまざまな用途が混在している街が必要であるとする。さらにこうした街には切れ目なく人の眼が行き届いて、地域のなかでの信頼関係が醸成され、犯罪も起こりにくくなるとする。そしてコルビュジェの「輝く都市」は高層建築によって人の眼に届かない死角を造りだし、大街区は地域社会を分断するとし、こうした発想が住宅建設に持ち込まれたニユーヨークの各地区は荒廃に向かった、と断じているのである。
対照的な2つの古典は、今もまちづくりを考える者を刺激し続けてくれる。