ここまで読んだあなたは、「なんだ、よく在りがちな、お涙頂戴、感動モノのストーリー?」と思われるかもしれない。しかし、それは間違いである。この本は、泣かせる事を意識した、そこら辺の小説とは一線をかしている。読者に全く媚びない文体。それゆえに、不覚にも泣きそうになる箇所がいくつも在る。
一般人が「不幸な少女」という単語から思いつく全ての!事を背負ったプリシャスだが、同じ境遇に悩み、傷ついている仲間と出会うことで、力強く生きる事を学んでいく。
そして、彼女や、その仲間が紡ぎだした力強い言葉達。それらは「詞」という形で物語の後半に納められている。
何か、諦めなければいけないモノを手にした人間の切なさ、強さ。前向きに「諦める」事で、前進していく事の大切さ、何が人を醜くさせるか、何が人を傷付けるか、何が人の品格を決定するか。この本にはそんな事が書かれている。
全く新しい文学。人間関係の描かれ方に、目からうろこが落ちる思いがした。