生き生きとした香り高いパステルカラーでカッツ（『Over the Moon』の著者）が描く軽やかなイラストは、赤ちゃんの笑顔のように抗いがたい魅力をこの絵本に与えている。ところが、絵本のなかの赤ちゃんは、まったく笑おうとしない。そこで、家族は赤ちゃんを眠りにつかせようと、カウントダウンをしながら赤ちゃんのかわいらしい体のあちこちにキスをしていく。まずはじめはママ。「10回のちいさなキスを、ちっちゃなちっちゃなつま先に」、そして「9回のゆかいなキスを、ちょこちょこ、もじもじと動くあんよに」。ページいっぱいにカラフルな色が広がるイラストには、次々と新しいやり方でかわいがられて抱きしめられる、気持ち良さげな赤ちゃんの姿が描かれている。おばあさんは「たかいたかい」をしながら、赤ちゃんのおへそに7回の「にぎやかなキス」。ペットの犬は、おむつ交換台にいる赤ちゃんをぺろぺろと6回なめる。「眠そうな夢見るあたま」に最後のキスを受けるころには、赤ちゃんはとても幸せそうにすやすやと眠っている。絵本全体で、「抱きしめる」ということが表現されている。平面的な構図やさまざまな画材の組み合わせ、そしてたくさんの水玉や花柄、ハート模様が効果的に使われ、愛情込めて縫われたクレイジーキルトのような温かみがあらゆる絵からにじみ出ている。この話を読んだら、赤ちゃんをキスで眠らせてみたくなるにちがいない。対象年齢1歳から5歳。
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