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悪霊 (アジア・ノワール)

価格: ¥1,500
カテゴリ: 単行本
ブランド: 毎日新聞社
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   バリ島と日本を舞台に、バリ舞踊に魅せられた人々の姿が描かれる長編小説。全編を通してバリからの熱い風が行間から漏れ出すような濃密な描写に圧倒される。著者の中上紀は、タイを舞台にした『彼女のプレンカ』で1999年すばる文学賞を受賞している。父は作家の中上健次。

   琴子は、旅行で訪れたバリ島で「真っ赤な大輪のハイビスカスの花」のようになって踊る舞踏家ルバの姿に心を奪われる。彼を踊りの師、そして男として愛しはじめる琴子。帰国後、ルバへのおもいを抱いたままダンス教室を開くが、やがてそこにはルバの娘であり、不思議な魅力とダンスの才能にあふれる少女マヌがやってくる。マヌは祭りの日、ある禁忌に触れ「悪霊」にとりつかれた者として村を追放されたのだった。

   バリのダンスをビジネスとして捉えるマヌの兄など、観光地であるバリでしたたかに生き抜いている人々の姿と、観光客の目には触れない奥深くに色濃く残る神秘的なものを、著者は同時に違和感なく描いていく。アジアに魅せられ、幾度も旅を重ねている著者の目に映るものすべては、一度体に取り込まれ、溶けあい、力強い言葉として放たれる。

   特に物語の後半、ルバとマヌ、琴子が日本の舞台で踊る場面は、官能的で、読む者を圧倒する迫力に満ちている。ガムランの音、観客の興奮、そして彼らの熱い吐息が今にも聞こえてきそうだ。読み終えてからも、しばらくバリの熱い空気に身をまかせていたくなる。(門倉紫麻)