今年の全米批評家協会賞受賞作!
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本書は2003年に亡くなったチリの作家ロベルト・ボラーニョの遺作の英訳版である。遺作ではあるが、未完ではない。約900ページの超大作で、全体が5つのパートに分けられている。個人的には、パート1の書き出しを「なか見!検索」で読み、一気にその世界に引き込まれた。それはこう始まる。
The first time that Jean-Claude Pelletier read Benno von Archimboldi was Christmas 1980, in Paris, when he was nineteen years old and studying German literature. The book in question was D'Arsonval. The young Pelletier didn't realize at the time that the novel was part of trilogy (made up of the English-themed The Garden and the Polish-themed The Leather Mask, together with the clearly French-themed D'Arsonval), but this ignorance or lapse or bibliographical lacuna, attributable only to his extreme youth, did nothing to diminish the wonder and admiration that the novel stirred in him.
このフランス人青年が、やがて他の研究者3人とともに謎の作家Benno von Archimboldiを探しにメキシコのサンタテレサという町を訪れるというのがパート1の筋である。マイナーな作家を発掘していくという設定は、私にとってはそれだけでもう十分に面白い。パート1からパート4までは、多少相互に関係しあってもいるが、独立した話として読むことが可能である。その中でも圧巻なのは、メキシコのサンタテレサを中心に次々と起こる女性連続殺人事件が延々と描写されていくパート4である。そして、最後のパート5では謎の作家Archimboldiについて徐々に明らかにされていく。非常に興味深い章構成である。これらがどう絡むのか、また絡まないのか?また、はたして題名の「2666」は一体何を意味しているのか?
この作品は今年の全米批評家協会賞も受賞している。他の候補作のことは知らないが、文句なしの受賞だったはずである。日本語の翻訳は出るのか出ないのかは知らないが、少しでも興味がおありの方にはぜひ強く薦めたい小説である。見返しに印刷されているある推薦文にはこう書かれている。
Do not be put off by the length or apparent strangeness of this book; it is a work of stunning originality. If you read only one book this year make it this one.