東日本編を待ってました
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建築好きの知人から、西日本編(2006年刊)に続き、東日本編をいただきました。以降、お気に入りの本になっています。
1945年〜1970年、モダニズム後期の日本の建築に焦点を当て、日本を南から縦断、それぞれ28物件、28物件で、合計57物件+αを紹介しています。
日経BPのサイトから抜粋すると、東日本編の紹介物件は以下の通りです。
●羽島市庁舎(坂倉準三) ●稲沢市庁舎(ゲンプラン) ●愛知県立芸術大学(吉村順三・奥村昭雄) ●長野県信濃美術館(日建設計) ●佐渡グランドホテル(菊竹清訓) ●岩窟ホール(池原義郎) ●群馬音楽センター(アントニン・レーモンド) ●松井田町役場(白井晟一)●山梨文化会館(丹下健三) ●秩父セメント第2工場(谷口吉郎+日建設計) ●新制作座文化センター(RIA建築綜合研究所) ●大学セミナー・ハウス(吉阪隆正) ●東京都水道局長沢浄水場(山田守) ●日本生命日比谷ビル(村野藤吾) ●栃木県議会棟庁舎(大高正人) ●福島県教育会館(ミド同人) ●古川市民会館(武基雄) ●寒河江市庁舎(黒川紀章) ●弘前市民会館(前川国男) ●登別温泉科学館(太田実)小●山敬三美術館(村野藤吾) ●新発田カトリック教会(アントニン・レーモンド) ●大学セミナー・ハウス本館(吉阪隆正) ●東海大学(山田守) ●最高裁判所(岡田新一) ●学習院大学ピラミッド校舎(前川国男) ●栃木県立博物館(川崎清) ●北海道開拓記念館(佐藤武夫)
こんな地方にこんなすごい(あるいはすっとんきょうな)建築があったのか、と驚くはず。
読者の建築知識や関心によって、醍醐味を感じるところは異なるかと思いますが、専門用語羅列の難しい本ではないので、おそらく、私のような建築初心者が一番親しみやすいのではないでしょうか。
まず、宮沢洋氏のイラストは男版太田垣晴子と言った感。笑いを誘いつつも、建築の見所ポイントを絵解きしてくれるテクはかなりのもの。経歴を見ると、実は『日経アーキテクチュア』副編集長で、イラストは趣味なんだそう。それにしてはうますぎ。
かつ、本の内容をより奥深くしているのが、建築ライター磯達雄氏の文章。
建築の技術や建築家の偉人伝というのとは異なっていて、建築物件の説明も入るのですが、そこから独自に想像を巡らせていきます。
この想像世界が、かなり大胆。善光寺に近い長野県信濃美術館は「牛」の字がモチーフなんじゃないか、とか、八王子の大学セミナー・ハウスが「快獣ブースカ」の撮影に使われたことから、ブースカのちょっともの悲しい、でも未来に向かっていった話に重ねたり、福島県教育会館の形からギター→ロックンロールの歴史に触れたり。
二人のイラストと文章のコンビネーションで、一つの建物が、どんどん世界を広げていってくれる。というより、建築というのは元来そうした物語性をはらんでいるものなのかもしれません。
実際に見に行ってみたくなりますし、それぞれ、物件の近くに住んでいる人にプレゼントすると喜ばれること必須です。