今まで読んだ彼の作品の中で一番良かったような気がします。
★★★★★
事故で足を痛めベッドから起き上がることすらままならない老人と、彼が空想する内戦状態の現代アメリカに迷い込んだ男性のお話が同時並行的に進行して行きます。最近のムラカミ・ハルキの作品風の展開なのですが、ポール・オースターが時々(いや、よく?)書く「観念世界」的な小説っぽくもあり、ちょっとヤだな、とヘボ読者の私は思ってしまいました。しかし、読み進めて行くうちに、その余り良い印象を与えなかった前半部の二重構造の意味合いが全て、それも自然に解き明かされてしまいます。どうしてジイちゃんは夜な夜なベッドでシコシコと「アメリカの内戦」を妄想してたのか・・・。ジイさんとその娘とそのまた娘の三人のお話だとも言えるのですが、私は最後読みながら目に涙さえ浮かべてしまいました。死んじまったバアさん含め、作品の主な登場人物の全てを愛することが出来た(別に皆偉くも立派でも、それほど魅力的であるわけでもないのですが)素晴らしい一編だと私は、心から思いました。