ガープの世界で有名なアーヴィングの４年ぶりの新作。1954年ニューハンプシャーの木材伐採作業地にあるTwisted Riverで新人の若者が事故で死ぬ。それは伐採集落の料理人 Dominicの妻が事故で亡くなった川でもあった。このアクシデントが間接的にもうひとつの重大なアクシデントを招き、その結果Dominicとその息子Dannyは逃亡者となる。この作品にも、おなじみのニューイングランド、熊、アクシデント、レスリング、アイオワ、そして若い男性と年上の女性との性関係、切り取られた身体部分、などが登場する。また、Dannyにはアーヴィング自身がもろに投影されている。
私にとってのアーヴィングの面白さは過剰とも言えるディテールにある。金曜日に肉を食べないカトリックのフレンチカナディアンと英語圏の木材伐採労働者のためにDominicが別々に作る料理、スクエアダンスのムーブメントDo-si-do、イタリア系移民が多いノースボストンに住む孤独なアイルランド系の教師の妄想、ピザに加える蜂蜜の秘訣、など、面白い部分は山ほど あるのだが、途中でだんだん鼻についてきた。
文字制限があるのでここで詳細を説明できないが、ダイハードなアーヴィングファ ンであれば「これぞアーヴィング！」と歓迎する作品であり、そうでない人の反応はまったく予想できない。私は「大いなる駄作」と感じたが私とは異なる感想を抱く人はいるはずだ から「自分で読んで結論を出してください」というのが、私からの率直なアドバイスである。