この奇妙な組み合わせのカップルを「お互いにベストパートナーを見つけた」的なつまらないマーケティング戦略だと思わないでほしい。本作は真の音楽的な恋愛であり、全編通して輝きに満ちている。本作はその活動ぶりが無節操にも思えるプロデューサー、Tボーン・バネット(伝統的なブルーグラスをよみがえらせた『O Brother, Where Art Thou?』で華々しい成功を収めた)がプロデュースしている。 彼の手によって、いまや70代になる伝説の男とその思いがけない当代のパートナーは、50年以上ものあいだベネットのトレードマークだった温かさと生まれながらの優美さを用いて、ルイ・アームストロングのレパートリー12曲に愛情を注いでいる。このふたり組は、陽気で皮肉のない「Exactly Like You」で本作の口火を切り、ベネットの盟友ピーター・マッツによる風格と情感のあるオーケストレーションに乗って、年齢差を越えた優しいボーカルのワルツを奏でている。けれども、「We Never Meet Again」「I'm Confessin'」や不滅の名曲「Wonderful World」「Lucky Old Sun」といったさらにメランコリックなナンバーでは、ふたりは時代を超えた音楽に心を通わせるところまで踏みこんでいる。ラングはそのほとんど原石のままの才能に心地よい香りを加えて本作を作り上げ、すぐれた酒場の歌手としての称号を受けている。本作を聴いていて、まだアンコールにならないのかという疑問はまず思いつくことはない。(Jerry McCulley ,Amazon.com)