鬼として生まれたからには、人間とも仲良くなりたい、そのために招待の立て札を立てる赤おに。「おに」というだけで敬遠し、立て札を疑いの目で見る村人。なかなか自分の真意をわかってもらえず悩む赤おにに友人としてある提案をする青おに。
青おにの「なにか、一つのめぼしいことをやりとげるには、きっとどこかで痛い想いか、損をしなくちゃならないさ。誰かが犠牲に、身代わりになるのでなければならないさ。」
現代にも、否、永遠に続く美しい愛の言葉です。
暴れん坊の悪い鬼という損な役割を担ったゆえに、赤おにとの離別を余儀なくされた青おにの心のかなしさ。青おにの深い友情に気付いてはらはらと涙を流す赤おにの心のさみしさ。お互いのつらさ、読者にもしんしんと伝わるお互いを思いやる愛ゆえの苦しみ。
人はさみしく、辛くかなしい体験を重ねて「優しい人間」になれるのではないでしょうか。祈りをこめて珠玉のようなこの絵本をたくさんの方々に読んで頂きたいと思います。