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稲垣足穂 [ちくま日本文学016]

価格: ¥924
カテゴリ: 文庫
ブランド: 筑摩書房
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摩訶不思議を我慢読み ★★★★★
童話、小説(現代モノ数篇、時代モノ一篇)、日記、エセー(評論というか思想書)が収録されており、巻末の年表を見ると稲垣足穂を「体感する」にはバランス良く編まれいることが知れた。冒頭の掌編集を読んでいると、星新一を彷彿とさせるような、さりとてハリウッド製カートゥーンを見ているようなとんとん拍子なリズム感、句読点を一切排除した文体(改行を多用している訳ではない)、月と彗星に対するフェティシズムに、時代を超越した(大正や昭和初期に執筆されたとはとても思えない)奇才を思わせたが、読み進むにつれ、私小説的要素のある作品が登場する中盤あたりから、終盤の形而上的芸術論の大爆発に至っては、小生のキャパシティーを凌駕し、鬼才の文章を目で追うのが精一杯で、佐々木マキの解説に登場する若者のように「我慢して読んだけれど、意味がわからなかった」に近い我慢読み必至であった。童話や小説では迸る思いを表現するには限界があって、単刀直入にエセーで嬉々として能弁となる印象を持った。月並みだけれど、「わからないけれど、その凄みは十二分に伝わる!」みたいな。稲垣足穂が語ると20世紀が「ブレード・ランナー」みたいな近未来に思えた。小生が生を受ける前の20世紀の幾年の間は所帯染みたところはなく、非ノスタルジックな、SF世界だったのだ。ひたすらその日に見た星座を書き連ねていく日記も後から振り返ると度肝を抜かれた。つげ義春の「夢日記」以来だな、こんなにぶっ飛んだのは。