感動的ではあるが。
★★★☆☆
Kate DiCamilloの作品は、作を追うごとに宗教色が増していくように思える。
この本は、傲慢さに気づかずにいたうさぎの人形が、苦難の末に尊い“愛”を見つける話なのだが、なによりも驚いたのは、うさぎが十字架に掛けられているとも見て取れる1枚の口絵だった。おそらくは画家もそれを意図してのものなのだろうが、実のところその口絵を見た瞬間、えもいわれぬ嫌な感じがしてしまった。教育的、哲学的ではあるものの、ある種の硬直化した“感動”を強制する物語のように思えてならない。
また、より児童書的傾向の強い前作、Tale of Despereaux にはある種の普遍性があり、どの世代にも指標の向く物語であったが、逆にこの The Miraculous Journey Of Edward Tulane は、児童書の範疇にしか収まり得ない物語ではないか。
感動する物語ではなく、感動しなくてはいけない物語と感じてしまうのは、あまりにもうがった見方だろうか。