物語は4つの話で構成されている。第1話は、ピー姫にベタぼれしたデスペローが悲惨な目に遭う、悲しいお話。第2話では、デスペローと同じく変わり者のドブネズミ、キアロスクーロが登場する。自分の住みかである地下牢の暗闇を嫌い、光をこよなく愛するキアロスクーロは、やがて城に侵入し、お妃様のスープに飛び込んでしまう。第3話は、何度も何度も「殴られ」たせいで耳がカリフラワーのようにつぶれた、幼い少女ミゲリー・ソーのお話。頭の回転が遅く、耳もろくに聞こえないミゲリーは、ピー姫の冠をかぶることだけを夢見ている。第4話は、地下牢送りとなったデスペローの話に戻り、やがてハツカネズミ、ドブネズミ、少女、王女の4つの生がつながって劇的な結末を迎える。
胸の内で密かに希望と夢の炎を燃やす子どもたちは、手が届かないと言われるものを欲しがったり「決して破ってはいけないルール」をあえて破ったりする“はみ出し者”ぞろいのキャストに親しみを覚えるだろう。ティモシー・バジル・エリングによる鉛筆描きのイラストも秀逸で、ディカミロの描く広範な光と闇のイメージはもちろん、最後にハッピーエンドを迎えるヒーロー、小さなネズミの優しさ、繊細さまでが見事に表現されている。(9歳以上向き)(Karin Snelon, Amazon.com)