【セブン-イレブンで24時間受取りOK・送料0円!】 著者/訳者名:久坂部羊/著 出版社名:幻冬舎 発行年月:2004年11月 関連キーワード:ハレツ はれつ、 クサカベ,ヨウ くさかべ,よう、 ゲントウシヤ ゲントウシヤ 2076 げんとうしや げんとうしや 2076 医者の診断ミスで妻を傷つけられた元新聞記者の松野は、“医療過誤”をテーマにしたノンフィクション執筆を思いつく。大学病院の医局に勤務する若き麻酔科医・江崎の協力を得て、医師たちの過去の失敗“痛恨の症例”や被害患者の取材を開始した。その過程で、「父は手術の失敗で死んだのではないか」と疑念を抱く美貌の人妻・枝利子が、医学部のエリート助教授・香村を相手に裁判を起こす。が、病院内外の圧力により裁判は難航。その裏で医療を国で統制しようと目論む“厚生労働省のマキャベリ”佐久間が香村に接触を始める…。枝利子の裁判の行方は?権力に翻弄される江崎と松野の運命は?そして佐久間の企図する「プロジェクト天寿」とは?大学病院の実態を克明に描き、来る日本老人社会の究極の解決法まで提示する、医療ミステリーの傑作。
それぞれの『正義』
★★★★☆
高齢化社会という簡単な解決法のない問題を、そのまま放置した
先にある未来を想像して怖くなりました。
だからと言って、作中の佐久間の示す方法が正しいとも思えなかったんですが。
作中の人物はみんな、自分の信じる正義というか信念というか、
そういうものに従って生きているのが印象深かったです。
少し見る角度が違ったり立場が変わると、その人が正義だと
信じているものが、単なる傲慢になったりする。
誰でもそうだと思いますが、人間はどんなことを行うにしても
自分が間違っていると自覚すると動けなくなるものなのかな
と思いました。作中でも、自分のミスを認めない態度を貫いた
香村でも一瞬弱気になる記述があったし。
身近に、医療従事者がいるので少し尋ねてみたのですが、
オペ場の看護師と麻酔医はほんとに仲良しだそうです(笑)。
テーマは常に高齢化社会
★★★★★
「廃用身」から引き続く、高齢化問題を問い掛ける力作。だれもが頭のどこかで考えてはいるが、とりあえず見ないふりをしている問題に、こういう方法はどう?と提案してくるのだが、方法が怖すぎます、久坂部さん。だが、ずっと提案し続けていってほしい気もする。最後に、それは悪いヤツだけど、佐久間の扱い、あそこまですることはないのでは…。別の意味、働き過ぎへの警鐘でもあるのかもしれないが。
ぽっくり逝きたいですか?
★★★★☆
ぴんぴん生きてぽっくり逝く,人生の終盤の姿として望ましいと考える人は多いでしょう。
もし,それが医療によって仕組まれることが可能だったらという,医療SFミステリーです。
いろいろと癖がある医師達,ジャーナリスト,官僚,医療事故の遺族ががっぷりと組んで,見ごたえたっぷりの好一番。
お勧めの1冊です。
ただ,私は大失敗しました。
この小説を読む前に,作者が著した「大学病院のウラは墓場―医学部が患者を殺す」を読んでしまったのです。小説を読む前に著者の立ち位置が分かってしまっていると,どうしても小説を小説として純粋に楽しめなくなってしまいます。先の展開を読みたがってしまうというか。
この作者の著作は出版順に読んでいく方が考えさせられ,楽しめたなぁともったいなかったです。
台詞と論証は素人
★★★★☆
医療の進歩に社会のあり方という視点から疑問を投げかける展開は国民的課題である
エリートが多数登場する物語でありながら方向性丸見えの単刀直入な会話が多すぎる
方向性を見えなくしたり これで会話を打ち切りたいような発言に対し巧みに押したり引いたりして
自分の希望まで話と心を操っていく会話の達人は出てくるべきだと思う 自分を取り巻く人々を
自分の望む位置づけや作用に引っ張る話術は権力者にまつわる凄み 自在さ 規範性である
せっかく虚構が舞台なのだから魂にもっと踏み込むべきだったと思う 医師の独善と内部告発と懲罰的人事の悪循環 功名心と良心 ヒポクラテスの原則の現代的意義などの追究すべき主題も上滑りである 同じく医療者の物語チャングムにあるハン尚宮の慈愛 クミョンの孤独 シン・イクピルの深謀遠慮といった胸をうつ台詞が本作にはない
またアルコール代謝と麻酔の代謝は関係ないと書いてあったが 母の知人が酒びたりのころ
虫垂炎にかかり麻酔がきかなくて看護師たちにおさえつけられての手術になったという
三島由紀夫が安楽死を論じていたら仮面の告白から夭折願望を書いていて 批評を読んでも現実感覚はあるので画期的な死生観を書いたろう
医師の本音がよくわかる
★★★★☆
内部告発を発端とした医療ミス裁判。患者側に協力しながらも、医師の立場と患者の立場の間で揺れる麻酔科医江崎。告発されたエリート心臓外科医香村。
医療の力を利用して老人をぽっくり死なせ、国家の医療費を削減すべく、「天寿」なるプロジェクトを推進する厚労省キャリア佐久間。
両者を追い、スクープを狙うジャーナリスト松野。
それぞれの利害が交錯し、限界を超えた時、事件は起きた・・・!
それぞれの立場の登場人物に語らせる本音には現実味があります。特に医師と患者の間で揺れる江崎の心理描写がいいです。著者が医師なだけに真実味があります。
全体としては、医療裁判あり、厚労省の壮大なプロジェクト計画あり、と先はそうなるんだろう、と気になってどんどん読み進められるおもしろさがあります。
前作の「廃用身」より、重さがなくなり、ミステリーとしてのバランスが取れていると思います。
一読の価値は十分ある思います。