個人的な感想ですが、このサントラを聞くとパンを作りたくなります(笑)
これも、過去の三作品に対する世の中の評価の高さからくる、お二人の自信の現れなのでしょう。そもそも、「1. 晴れた日に…」と「2. 旅立ち」という繊細な旋律でゆっくりと静かに作品へと引き込んだ後、「3. 海の見える街」で、旅立ちへの期待と不安を巧みに表現した名曲を聴かせるのだから、ずるいとしかいいようがありません。
スタジオ録音のため小編成のオーケストラではありますが、それがかえって優しく繊細なオーケストレーション、もしくは、「街」というものを表現するにふさわしい楽しい音楽につながっていて、たとえば、「5. パン屋の手伝い」や「15. ウルスラの小屋へ」などは、久石さんとスタジオの皆さんが息ぴったりに楽しんで演奏しているのが容易に想像できるほど、うまく仕上がっています。
「3. 海の見える街」も名曲ですが、実は、「11. オソノさんのたのみ事…」や「15. ウルスラの小屋」のようなものすごく優しい曲があったり、「16. 神秘なる絵」のようなその曲名の通り非常に美しい曲もあったり、とにかく曲それぞれが魅力をもっています。
もちろん、「18. おじいさんのデッキブラシ」や「19. デッキブラシでランデブー」でうまく盛り上げて、荒井由美さんの名曲で締めくくることでアルバムを閉じているところも構成の妙(ルージュの伝言は、オープニングに近いほうに置いておいたほうがよかったかもしれませんが、そこは目をつぶりましょう)。宮崎駿監督と久石譲さんの組んだ初期の名盤です。