本書の前の巻のレビューにわたくしは以下のように書いた。
「本書の目的は教員が数学をいかなる心構えと準備をして、いかに教え
るか、という教授法を示すことにある。したがって上記の議論はその方
法論に沿ったものとなっている。抽象化よりも具象化、歴史的背景、他
分野との連関に重点を置いていることにわたくしは同感している。本書
が書かれた時期は現代ほど抽象化も進んでいなかったはずだからその観
点は教育の本質といってよいし、学生の理解を深めるためには歴史背景
と他分野との連関は欠かせないものだと思う。」
本書は Klein の専門ということがあるのか、前の巻よりも高度な議論
となっており、上記の事柄は歴史的背景を除けば奥に引っ込んでしまっ
ている。
原書は三巻本で、本書は第二巻の英訳。第一巻(算術、代数、解析)の英
訳も Dover に入っている。Dover 社に問合せたところ、第三巻(微分積
分学の幾何学への応用)の英訳の計画はないそうで残念。
ところで Dover のカバーデザインは、本文中の図を基調にしたどぎつ
い色づかいのものばかりで感心できなかったけれども、本書はパステル
カラーを使ったしゃれたものとなっている。