大人も楽しめるオズの魔法使い
★★★★☆
翻訳が「つめたいよるに」や「冷静と情熱のあいだ」の作者として有名な江國香織さん。
原作ではなく翻訳ですが、良くも悪くも文のそこかしこに彼女の「らしさ」が出てしまっています。
綺麗だけれど、スピード感がないというか……。
冒険色の強いパート(魔女と対決するシーンなど)では、それがかなり裏目に出ており、
例えるならば第九の喜びの歌がしっとり歌われているのを耳にしたときのような、ちぐはぐな印象を受けます。
先に短所を挙げてしまいましたが、それでも魅力的なのがこの本の持つ神秘的な雰囲気です。
静謐でどこかミステリアスなツヴェルガー氏の挿絵プラス、しめやかで淡々とした美しさのある江國氏の翻訳。
この二者の相性がとても良く、お互いをより素晴らしいものへと引き立て合っています。
小さなお子様よりも、この不思議な世界観に惹かれる大人の方にお勧めしたい本です。
「子どもたちにただ楽しんでもらうだけに」とこの作品を書いた原作者L・フランク・ボウムの願いからは外れてしまっているかもしれませんが、今までになかったタイプのオズの魔法使いとして楽しむことが出来ました。