クチコミ・マーケティング 翻訳も読みやすい
★★★★★
書名の WOM とは "Word of mouth" の頭字語(acronym)で、日本語でいう「クチコミ」です。この書名でちょっと損してるかもしれません。普通にクチコミ・マーケティングで良かったと思います。
消費財のマーケティングで、なぜクチコミがこれほど重要になったか。著者も言うようにネットの普及です。ブログやメールなどを通じて、良い評判もそうでない評判もあっと言う間に伝わります。
最初の第1章で著者は誠実さが何より大切と強調しています。関係者の成りすましのレビューは、実はこのサイトの中でもたまに見かけますが、消費者の鋭い嗅覚で嗅ぎ分けられてしまいます。
あとは読んでのお楽しみですが、クチコミ・マーケティングを推進する基本を説明しています。こういう本のレビューには必ず、当たり前のことばかりという批判があるかと思いますが、事業として何かを行なう場合、一番気を付けなければならないのはすべきことを見落とすことです。最先端の方法は基本がきちんと出来てからでも遅くありません。
とは言え、多くの方がこの本で意外な発見をそれも沢山されることと思います。個人事業から大企業まで、消費者を対象としたマーケティングの担当者の方にお勧めしたいと思います。良い評判を得、そうでない評判を防ぐためです。なお、著者はこの方法は対消費者に限らず、対企業でも有効としています。
原著 Word of Mouth Marketing はネットで一部が公開されています。この本と比較してみましたが、意外と自由に意訳してあります。翻訳者が原文の意味を十分に理解した上で読みやすさを優先しているのでしょう。何箇所か個人的な感覚では別の訳語のほうが良いかなとは思いました。ですが、それは趣味の問題です。読みやすい良い翻訳と思います。
〔追記〕
著者のいう Talker になって、もう少しこの本をクチコミで宣伝しておきます。ガイ・カワサキ氏が序文(原著では跋文)を寄せて、この本で印象に残った10のアイデアを挙げています。そこから2点だけ引用します。一緒に原文も書いておきましたので、翻訳と原著とどちらを買うかの参考にしてください。この翻訳はかなり意訳ですが、原文の意味を十分に理解した上なので、読みやすさを優先して悪くないと思います。まあ、4は「慣れている」としたいとも思ったりしますけれども。
3. 実際に嫌な思いをした人と、「嫌な思いをした」と耳にした人とでは、後者のほうがその店に足を踏み入れる確率が低い。
A study showed that people who heard about a bad shopping experience are less likely to go to the same store than the person who actually had the bad experience.
4. 初めて店を訪れた(商品を買った)顧客は、クチコミを広める客となる可能性が一番高い。リピート客は商品やサービスのよさをすでに知っているが、初めての顧客はそのよさに触れると感激する。
The most powerful word of mouth advocates might be the customers who have done business with you only once so far. They are the most excited; repeat customers are probably used to the great product/service.
顧客と話すセンスがあれば成功は難くない
★★★★☆
人の注目を集めたり、買いたいと思わせるのにクチコミという古典的な手法があります。著者のセルヴィッツ氏はブログやソーシャルネットワークなどのインターネット媒体を利用することを提案しています。一般にマーケッターはネットを使ったCRMにリスクを感じて極端に保守的な手法しか取れません。もし、自社のサイトが炎上なんぞしたら首がいくつあっても足りないからです。
セルヴィッツの語り口はそんな不安を一つ一つつぶしていきなおかつその効用を示します。扱っているプロダクトによるとは思いますが、まずはカスタマーセンターの教育から、そしてネットをウォッチして会話に加わる専任を置くことからパイロットとして始めるのがいいでしょう。始めるならまず本書を読んでからにして下さい。WOMマーケティングにはルールがあり、それを踏まえて臨まなければまず炎上の憂き目に会うことが非常に高いからです。
WOMマーケティングをチャンスと見るかリスクとして捕らえるかはあなたの顧客と話すセンスによるのかもしれません。
買いです!
★★★★☆
有難うございました。
本当に勉強になりました。
きっとこれから私は口コミでこの本を広めることになるでしょうwwww